第4章 呼ばれざるヒーロー
第28話 彼女を探して
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あの後、俺は(ほとんど食べてないけど)支払いを済ませて、矢村を連れて救芽井を追った。
しかし商店街に入った彼女の姿は、人混みに紛れていくうち、徐々にその行方をくらましてしまった。人通りの多いイブの日だってのが、ここまで「間が悪い」と感じるとは……。
ところどころで、「すっごいイケメンを見た」とか「めっちゃ可愛い女の子がいた」とか噂してるのが聞こえたことから、そう遠くへ入ってないはずなんだがなぁ。救芽井にしても古我知さんにしても、こんな何もない田舎町には、あまりにも場違いなイケメン&美少女なんだから。
「くそっ、すっかり見失っちまったい!」
「もう家に帰ったんちゃうん?」
「いや……最後に見掛けた時は、救芽井ん家とは正反対の方向だった。もうちょいここを捜そう!」
周りの見慣れた住民のみんなは、人の気も知らず和気藹々とイブを満喫してる。ちくしょー! リア充爆発しろっ!
……いやまぁ、実際のところは、こっちの事情が知られない方がマシなんですけどね。
じゃあ、次は交番のお巡りさんにでも訪ねてみるか――と思い立ち、商店街のはずれに出ようとした……途端。
「ちょっ――ちょっと待ってや!」
「んお? どした?」
不安げな表情を浮かべた矢村に、後ろから手を引かれてブレーキされてしまった。俺は横断歩道から飛び出す子供かー!
「な……なんでわざわざ追い掛けるん? もう関わらんでええって言うたやん、あの娘」
お前が言わせたんだろうが……とは言いづらい。言葉がキツかったとは思うが、矢村は矢村で俺を心配してくれていたんだから。
だけど、これは俺と救芽井の問題だから……心配して貰っといて難なんだけど、矢村には余り気にしないでほしかった、かな。
「確かに、アイツと関わる義理なんてないかも知れないけどさ。俺、未だに変態呼ばわりされたまんまなんだぜ? 仲悪いままおさらばなんて、後味が悪いだろ」
「やけどさぁ……!」
「んなこと言っちゃって、お前だって『悪いことしたかなー』って顔してたじゃん」
「うぅ……」
そう。
矢村はただ、俺を危険から遠ざけようとしてただけだ。救芽井そのものを毛嫌いしていたわけじゃない。……まー、ちょっと意味わかんないことで張り合いはしてたけど。
――事実、二人は喫茶店の前では仲良く喋ってる時もあった。「技術の解放を望む者達」が絡みさえしなければ、こんな仲たがいをしてしまうようなことにはならなかっただろうに。
悪いのは、古我知さんだろう。救芽井を責め立てるのは筋違いのはずなんだ。それが薄々わかっていたから、矢村だってあんな顔をしていたんじゃないか?
今さら追い掛けたところで、何かが好転するとは限らないし、却って救芽井の足を引っ張ることになるかも知れない。
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