第4章 呼ばれざるヒーロー
第28話 彼女を探して
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のぬいぐるみ屋だった。ガラスのショーケースに飾られたぬいぐるみは、今もズラリと並べられている。
「あれ……やっぱ無くなってる」
俺が感じていた違和感の正体は、そのショーケースの中にあった。
以前、救芽井が買っていった奴の隣に飾られていたウサギのぬいぐるみが、忽然と姿を消していたのだ。二体ピッタリと寄り添っていた格好だったんだが、まさか両方共消失していようとは。
「そこにあった二匹のウサギさんねぇ。とっても可愛い女の子が買って行ったのよ」
すると、店の中からニコニコと朗らかに笑うおばあちゃんが出て来た。店主さんかな?
「その女の子って、俺と同い年くらいでしたか?」
「えぇ。あなた、あの娘のお友達?」
「うーんと、まぁそんなところで」
「そうなの……。それじゃ、また会った時には励ましてあげてね。なんだかあの娘、寂しそうな顔してたから」
おばあちゃんは、両手で抱えていたクマのぬいぐるみで可愛くジェスチャーしながら、優しく微笑んできた。……寂しそう、か。
俺はその後、矢村と一緒に来た道を引き返し、救芽井家に向かった。商店街はくまなく捜したし、他に思い当たる場所もないし。
――それに、デカいぬいぐるみを抱えて他所へ行くとも思えない。彼女なりに、なにか思うところがあったのだろうか。
俺ん家と隣接している救芽井家が見えてきた頃には、すっかり日も落ちて夜の帳が降りようとしていた。いよいよ、戦いの時が近づいて来たって感じなのかもな。
「イブって時やのに……神様もひどいことするもんやなぁ」
「ひでぇのは古我知さんさ。神様でも――ましてや救芽井でもない」
確かに最悪のイブだけど……それは、俺達だけじゃないんだ。むしろ、もっと大変なもんを背負ってる女の子がいる。
出来るもんなら、せめて応援の一言でも言ってやりたいもんだが――あ。
「あ」
刹那。
俺の心の声と、彼女の肉声が重なった。
救芽井家のドアから出て来た彼女と目が合った瞬間、俺は――言葉を探すあまり、固まってしまった。
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