第27話 まさかのリストラ宣言
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……とまぁ、俺と兄貴の話なんてこのくらいのもんだ。別にペラペラ喋るだけの価値があるようなもんでもない。
けど、古我知さんは割りと真面目に俺の話を聞いていた。なにがそんなに興味深いんだか。
「いい話じゃないか。……僕には、家族なんていないからね」
「あぁ?」
「――僕が小学生の頃だ。戦場のジャーナリストだった両親は、紛争地帯での取材の時に……」
そこで言葉を切り、彼は手洗い場の鏡に向けて顔を逸らす。そこに映った古我知さんの顔は、まるで憑かれたかのような「使命感」に包まれた色を湛えていた。
「……そんな僕を引き取り、育ててくれたのが救芽井家だった」
「――なんだよそれ。恩を仇で返そうってのか!?」
「違う。恩人だからこそ、彼らの夢や技術をふいにしたくないんだ。兵器転用したと言っても、永久にその役割しか果たさないわけじゃない。『軍用』だった『インターネット』が世界的に普及したように、いずれは救芽井家の願い通りに使われる日が必ず来る。僕の理念は、より確実に救芽井家の悲願を達成するための、『遠回り』に過ぎないんだよ」
「その『遠回り』を認めたら、人を救うための着鎧甲冑で何人もの人が殺されちまうんだろ。それが嫌だから、救芽井んとこの人達はみんな反対したんだろうが!」
確かに、古我知さんの言うことはわからんでもない。自分の恩人達の悲願が、理想にこだわって潰れてしまったらやり切れないもんだろう。付き合いの浅い俺にだって、それくらいはなんとなく察しがつく。
だが、それはあくまで彼の主観でしかない。最後に決めるのは、救芽井の家族達だろう。
――結局、古我知さんは自分の価値観で、人のやることにケチをつけてるだけだ。そんな独りよがりを許したら、救芽井の「願い」も俺の「心」も見殺しにされちまう!
「どうあっても、僕のやろうとしてることが許せないかい?」
「ああ、ダメなもんはダメだ。『部外者』の俺から見ても、あんたがしようとしてることは単なるわがままなんだよ!」
「……そうか。残念だ」
彼は俺を哀れむような目で一瞥する。鏡という壁を通じて映し出された彼の表情は、いじめられっ子のような閉塞感を帯びていた。
そんな憂いを背負ったような顔を俺の目に焼き付けて、古我知さんはトイレを後にしようとする。なんだかトボトボという擬音が聞こえてきそうな、哀愁のある背中だった。
もちろん一人でポツンと留まるわけにも行かず、俺は彼に続くように男子トイレから脱出した。だって臭うんだもん!
「さて、いい加減戻らないと二人がうるさ――って、え?」
とりあえず救芽井と矢村が待っているであろう席に向かおう……としていた俺の前には、二人を張り込みのように見張る古我知さんの姿があった。
遠目に見る限りだと、矢村はど
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