第26話 損な性格は兄貴譲り
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中学一年になったばかりの頃。
俺は兄貴と比べられる形で、ちょっとしたイジメに遭っていた。
「一煉寺って、兄貴はカッコイイよな〜。兄貴は、さ」
「かわいそーに。兄貴にいい遺伝子全部持ってかれちゃったんじゃねーの?」
「言えてる言えてる! つか、ホントに兄弟なのか? 弟の方は絶対捨て子かなんかだろ!」
冗談で言ってるのか、本気でそう考えてるのか。聞き耳を立てていただけの俺にはわからなかった。
だが、連中の言うことがおおよそ当たりだというのは、間違いなかった。だから俺は特に抵抗する気は起きなかった。
いじめっ子が悪い、というのも事実だろうが、俺が余りにも「イジメの標的」として適してしまっていたのも、また事実だった。
俺は、兄貴に比べて明らかに劣っていた。
頭も頭もよろしくないし、運動だって出来ない。喧嘩なんて以っての外。身長なんて、女の子の救芽井と大差ないくらいだ。
対して、兄貴はイケメンで長身。それに加えて、いいとこの大学に入れて町内では有名人。なにもかもが完璧で、クラスの奴が言うように「親の遺伝子をいいとこだけ貰って生まれてきた」ような奴だった。
敢えてダメなところを挙げるなら……何人も侍らしてる女を放ってでも、出来損ないの弟を優先するところだろうか。
「彼女とホテルに泊まって来る」って連絡しときながら、「俺が風邪を引いた」と聞いた途端に、息せき切って帰ってくることもあった。それに、中学の入学祝いのために、彼女のプレゼントを断念してエロゲーを買ってくることもあった。
そんなことを繰り返したばっかりに、今となってはモテ度が低迷してしまっているようだ。それでも俺から見れば十分リア充だが。
「おい龍太、どうしたんだ? 最近お兄ちゃんに冷たいなー」
「っせーなぁー! てめぇにゃ関係ねーだろ!」
そんな兄貴が、俺は正直妬ましかった。だから、よく突っぱねていた。なんでお前だけがそんなにいいんだ。なんで俺だけこうなんだ、って。
……わかってる。そんなもん、俺が自己チューなだけだってことくらい。
兄貴は兄貴で、大学で勉強したりバイトしたり少林寺拳法の修行に取り組んだりと、かなり忙しい日々を送っている。本当は俺に付き合う時間なんて、ないはずなのに。
なのにアイツは、嫌な顔一つせずに、「俺の兄貴」であり続けた。「なんでわざわざ出来の悪い弟に付き合うのか」と問い質せば、決まって兄貴は困ったような顔をして――
「だって家族だろ? 子供には、大人の味方が付いてなきゃ」
――と、それが当たり前であるように答えていた。
そして、俺がそういう話を振り続けていくうち、いつの間にか俺は兄貴に道場まで引っ張り出され、少林寺拳法の練習をするようになっていた。「一煉寺道院」なんて名前の道場
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