第26話 損な性格は兄貴譲り
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だった気がするが……まさか、な。偶然名前が被っただけだろう。
それはさて置き、今だからわかることだが――恐らく何度も自分を卑下するようなことを言う俺を見て、なんとなく俺がいじめられていることを察したんだろう。「俺を守るため」に、小さな頃から親父の元で少林寺拳法を始めたという兄貴からすれば、当然の判断だったのかも知れない。
もちろん、最初は何度もフェイスガードや胴に、手痛い突き蹴りを叩き込まれた。痛い思い、怖い思いを重ねつづけていた。
――そして、兄貴はそんな痛みを乗り越えてきた上で、俺に手を差し延べていたんだと知った。手酷く殴られ、痣を作っても、兄貴は激しい稽古を続けていたんだ。いつも俺の隣で、俺を守るために。
――俺は、そんな兄貴になにか出来るだろうか?
考えてみたことはあるが、なかなか思いつけそうにはない。
あるとすれば、それは兄貴のように俺を守ることだ。俺の力で、俺を守ることだ。
そしてそれは、俺の体じゃない。俺っていう人間を作ってる、中身。よーするに、「心」みたいなもんだ。
自分が許せないことを見過ごしたら、俺は俺の「心」を守れない。見過ごさないようにして怪我をしたら、俺は俺の「体」を守れないことになる。
兄貴は、出来ることならどちらも避けたかったはずなんだ。だから、俺はどっちも出来るようになる。それが、兄貴が願うことなんなら。
――まぁ、矢村の時は「体」の方は守れなかったけどな。それでも、結果としてイジメがなくなったことで、アイツは喜んでいた。
俺が初めて、俺の「心」を守れたからだ。矢村を脅かす奴を放って置けない、そんな心境を「行動」に移せたことが、大きな進歩になっていたんだ。
そう、矢村を助けようとして、俺は初めて前に進むことができた。
それが出来たのは――そう、兄貴がいたからだ。
兄貴がいなければ、それこそ俺は傍観者であり続けたし、それを不自然だとは思わなかっただろう。矢村を助けなくちゃいけない、ってことに気づきもしなかったはずだ。
大人の味方が付いていたから、ガキの俺は前に進めた。
――根拠はないけど、それはきっと……救芽井にも言えるんだと思う。
アイツは両親を奪われ、ゴロマルさんしか頼りがいない中で、必死に抗ってる。
……俺は大人じゃないから、兄貴みたいに助けてやることは出来ないけど。たかが一介の、男子中学生でしかないけど。
それでも、支えてやることが出来るなら。そばについててやることに意味があるなら。
彼女にとって「他所の世界」である松霧町に住む、「外部の人間」に味方がいることに、ほんのちょっとでも価値があるなら。いることと、いないこと――1と0に違いがあるなら。
俺は、彼女の味方でいたい。せめて、俺の「心」を守
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