第25話 敵のボスには得てして事情があるもの
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る――なんて考えてたのかもな。
あいにく、俺はそこまで情に厚くはない。ついでに言うと、俺はもはや『赤の他人』じゃない。
「その家族のためだとかなんだとか言っといて、結局そいつらをまとめて泣かしてんじゃねーか。そんなはた迷惑な親切は、誰から見たって御免被りたいね」
そう。救芽井は、さらわれた両親のためにこの町に来て、あんなに怒ったり泣いたり戦ったりしていた。『普通の女の子』の彼女がそんなことをしなきゃならないのは、古我知さんが余計なマネをしているからに他ならない。
なら、俺がやらなくちゃならないことは一つ。
「そんなもん、ブッ壊してナンボだろ」
そんな俺のキメ台詞が効いたのか、古我知さんは一瞬キョトンとした――と思ったら。
「あはは……そうかそうか。ブッ壊す――か」
割と平然でした。
……いや、あのねー。こういう説教タイムって大抵、敵ってたじろぐもんなんだと思うんですよ。だからちょっとくらいうろたえてくれたっていいんじゃないかなー。
「夕べ、遠回しに君のお兄さんに同じ話題を振った時、同じことを言われたよ。『悪いのは、勝手なことしでかしてる奴の方だ!』ってね」
「……あ、兄貴が?」
「ああ。――いやぁ、やっぱり兄弟だねぇ。君自身、彼になにか素晴らしい輝きを貰ったことがあるんじゃないかい?」
からかうような口調で、古我知さんはニヤニヤしながら俺の反応を伺う。その一方で、ボソボソと「『一煉寺道院』なんて場所を隣町で見たことがあるが……まさかね」とか呟いてるが。
「……素晴らしい輝き、ねぇ。そんなよく出来たエピソードなんてないなぁ。あいにく、ダサくて薄汚れたお話しか持ち合わせがねーんだ、これが」
――俺と兄貴の話。そこには、素晴らしい輝きなんてない。
あるのは薄汚さ、ダサさ、そしてちょっとの眩しさだけだ。
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