第23話 敵とのエンカウント率が異常な件
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
人に頼ってばっかで、自分はなにもしてなくて……情けなくてしょうがないけど。
そんな俺でも、何かをする資格があるなら。まだ、間に合うなら。
「あんたは一発、ぶっ飛ばさないとな」
ピストルの銃口と共に、激しい敵意を向けて来るオッサン。その得物を握る手が震えていることに気がついたのは、彼と対面してすぐのことだった。
――そんな些細なもんが見えてるなんて、我ながらかなり冷静なんだな……ちょっと意外だった。ドアを吹っ飛ばした瞬間なんて、頭の中がオーバーヒートしてたってのに。
俺ってわりかしクールなのかもな。それとも薄情なだけか?
――いや、違う。
妙に静かなのは、頭ん中「だけ」だ。身体の芯から噴き出してる感情の渦は、カッとなった瞬間のまま、その熱気を維持している。
そういえば、人は「怒り」が一定のラインを越えちまったら、かえってひどく落ち着いてしまうもんらしい。昔、兄貴が聞きかじった知識を披露してる中に、そんな話があった。
案外、今の俺はそんな感じなのかもな。脳みそだけは冷めきっていて、心の奥は焼けるように熱い。不思議と、怒る時に感じる頭の熱は感じられず、四肢だけがみるみる熱を帯びていく。
――まるで、思考と感情が切り離されてしまったかのように。
「う、動くなよテメェ。そこから一歩でも近づいてみろ! 嬢ちゃん二人の頭が吹っ飛――!」
「救済の先駆者」の異様な風貌にただならぬ雰囲気を覚えたのか、オッサンは直接俺を撃つより、救芽井と矢村を人質に取ろうと「していた」。
「――隙ありッ!」
「げッ!?」
彼の注意が俺に集中していた間に、救芽井がいつものような凛々しい顔つきを取り戻し、オッサンの背後を取っていたのだ。
そして勇気を振り絞り、銃を持った暴漢のピストルを一瞬で掠め取るその姿は――まさしく俺が知っているスーパーヒロインそのものだった。
「こ、こんのぉ!」
しかも、怯えていた矢村までもが救芽井の反撃に鼓舞される形で、オッサンの足の甲を踏み付けるという逆襲に出た。
「ぎゃうッ!」
踵で思い切り急所を踏み付けられ、痛みの余り飛び跳ねている。ハイヒールじゃなくてよかったねオッサン……。
――どうやら、俺が着鎧してオッサンの隙を作ることこそが救芽井の狙いだったらしい。そのために囮役を買って出る無茶ブリは、さすが松霧町のスーパーヒロインってとこだな。
さて……それじゃ、彼女達に倣って俺もお仕置きと行こうかね。
「ぎぃ……このガキ共がッ!」
「きゃあっ!?」
すると、俺が攻撃に出ようと構えるのとほぼ同時に、オッサンが救芽井を振り払って自分の懐に手を伸ばそうとしていた。力任せに弾かれた救芽井は、女の子の限界ゆえか思い切り尻餅をついてしまう。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ