第23話 敵とのエンカウント率が異常な件
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はじめた。上手く行ったみたいだ!
「まだよ。次は呼吸を復活させないと!」
俺の思考を読んだかのように、救芽井は険しい声色で次の処置に移る旨を口にする。もうコイツ、エスパーでいいだろ。
そっと包み込むように顎を持ち、彼女は自分の唇……の部分に当たるマスクを店員さんのそれと重ね合わせる。いわゆる人口呼吸の図だ。
……って、「マスクのデザイン」の唇でそんなことして意味あんの?
「あの唇みたいなマスクの部分、バックルの中にあるちっこいタンクから、人口呼吸用の酸素を噴き出す仕組みなんやって。水を吸い出す機能も兼ねてるから、かなり効果があるらしいんよ」
そんな俺の脳内疑問に、矢村先生が聞いてもいないのに答えてくれました。エスパー二号あらわる!
っていうか、あのマスクの唇型ってそんな機能があったのか……。正直、設計者の趣味だと思ってました。ゴメンナサイ!
◇
――やがて「救済の先駆者」こと救芽井の処置が功を奏し、店員さんの心拍と呼吸は順調に回復した。
……と言っても「最低限の処置」を施したくらいで、本格的な治療は病院で行われるものらしい。それでも、一命を取り留められるのは間違いないと見ていいのだそうだ。
また、強盗達は逃げた奴やピストルのオッサンを含め全員逮捕され、喫茶店の客達に怪我人は一人も出なかったらしい。
そして、表沙汰になったのは「噂のスーパーヒロインに酷似したスーパーヒーローが現れた」という話題くらいで、救芽井や俺の素性が露呈する事態はなんとか避けられたようだ。
「いやぁ〜、無事で良かったよ龍太君。でもこれに懲りたら、二股は控えた方がいいよぉ?」
「だから違うって言ってんでしょ!」
「はっはっは! 元気がいいようで何より! では、本官はこれにて退却ぅ!」
相変わらずませている、商店街の交番のお巡りさんによる事情聴取を終え、一件落着を果たした俺達は、さっきの喫茶店から大分離れたファミレスに落ち着いていた。
「――変態君。その……助けてくれて、ありがとう。あの時、かっこよかったよ」
向かいの席で、ちょっと照れ臭そうに救芽井がお礼を言ってくる。普段の扱いが扱いだから、こうまともにそんなこと言われたら、こっちもこっぱすがしいんだよなぁ……。
「……いーよ、別に。役に立ったんなら、それでいい」
「ムッ! なにをいい雰囲気作っとんや!? アタシだって頑張ったやろ!?」
俺にズイッと顔を寄せながら、矢村が食いついて来る。そうそう、コイツだって怖かったはずなのに、よく戦ったよなぁ。あそこに座ってたのが俺だったら、終始ビビって何もできなかったと思うわ。
しかしあんなことの後だってのに、我ながらよく落ち着いてこんな場所に来れたもんだ。これでまた強盗が出て来たら
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