第23話 敵とのエンカウント率が異常な件
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れていて、わずかでも衝撃が走れば爆発する危険があります!」
ここが重要だ。客達の動きを封じてテーブルから出さないようにするには、「動いたらヤバイ」という理由を付けなくてはならない。
安全ピンが取れているという話は嘘だが、手榴弾があるというのはマジだ。倒れたオッサンの懐から出てきたモノだから、テーブルの下から覗いて見ていた人だっているだろうし、信憑性はあるはず。
「しかし、ご安心下さい! ここには手榴弾解体のプロがいます! 彼に掛かれば数分で手榴弾を無力化できるでしょう! それまで、皆さんはお静かにお待ち下さい! 数分以内に、私達が必ず手榴弾を処分して見せます!」
そして、「自分達がなんとかするから静かにしといてね」という旨を伝える。状況が全く見えていない中で、出来るだけ詳しい情報を与えて信用させる。客達の身動きが取れないようにするには、それくらいしか方法はないだろう。
さらに、絶対に「救済の先駆者」が救芽井だとバレないように、プロフェッショナルを「彼」と形容する。少しでも、与える情報と実際の状況に「齟齬を生じさせる」ためだ。
「へ、変態君……!?」
「俺に出来るお膳立てはここまでだ。お前じゃないと、この人は救えない! 頼む!」
「腕輪型着鎧装置」を外して本来の姿に戻ると、俺は預かっていたモノを持ち主に返す。ここからは、「救済の先駆者」の本領だ。
「……わかったわ、ありがとう。――着鎧甲冑ッ!」
そんな俺の意図を知ってか知らずか、彼女は「腕輪型着鎧装置」を素早く手首に巻き付けると、慣れた動作で音声入力しつつ、装着している手を掲げた。そんな変身ポーズあったんだ……。
そして瞬く間に「救済の先駆者」への着鎧を果たした救芽井は、迅速に店員さんの救護に当たる。
バックルの部分から管に繋がれた小さいアイロンのようなものを取り出し、彼女は流れ作業のように迷うことなくそれを胸に押し当てた。
「なんだそりゃ?」と質問しようと口を開く瞬間、「バチッ!」と電気が弾けるような音がして店員さんの身体が跳ね上がり、俺はたまげてひっくり返ってしまう。
横からコソッと矢村が教えてくれたんだが、これはどうやら「AED」を携帯用に改造したものらしい。確かに「AED」と言えば電気ショックを使う救命用具だけどさ……先に言ってよ! こっちは精神的に電気ショック喰らっちまったよ!
「……つーかなんで矢村がそんなこと知ってんだよ?」
「今朝に龍太が訓練しとる間に、いろいろ教えてくれたんや」
「俺には訓練ばっかりなのに……ひでぇや。男女差別だ」
……おや。心なしか「救済の先駆者」の視線が痛い。サーセン。
しばらく救芽井のマスク越しのジト目に耐えつつ見守っていると、少しずつだが店員さんの胸板が上下に動き
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