第17話 船出から座礁
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午前中たっぷりと救芽井にしごかれたかと思えば、今度は受験勉強かぁ……。
こんなゴタゴタさえなけりゃ、しんどいにしたって受験の方だけで済んだんだろうに、全く間が悪い時に巻き込んでくれたもんだ。
そんな愚痴をこぼす暇もなく、俺は自宅に二人を招いて勉強会に興じることに。
今回はどういうわけか救芽井もついてくるらしく、二人掛かりのフルボッコが容易に予想される。こいつら……俺を心身共に滅殺する気満々か!?
そのわけを問いはしたが、「間違いを犯さないように見張るため」の一点張りで、それがどういう間違いなのかまでは教えてくれないままだった。解せぬ。
さて……そういうわけで俺は自室にて、二人の美少女に「修羅場の受験勉強」を見てもらうという、「嬉しいようで冷静に鑑みるとそうでもない」シチュエーションに直面することになったわけだ。
「よぉし、んじゃあ勉強しやすいようにテーブル動かさんとな。ちょっと、テーブルかいてや」
「おう。救芽井、手伝ってくれ」
「え!? う、うん……」
まず勉強しやすいように、壁に立て掛けられてるテーブルを運ぶ作業から入る。俺は矢村の指示通り、救芽井と二人でテーブルに向かう――のだが。
――ガリガリガリッ!
「ぐ、ぐわあああッ!?」
突如、救芽井が何を血迷ったのか机を思い切り引っ掻き出した! 何考えてんだコイツ! み、耳が痛い! 鼓膜が、鼓膜が吹き飛ぶぅぅぅッ!
「え、ええ!? どうしたの!?」
「あんたがどうしたんだっつーの! 矢村の何を聞いてたんだよ!?」
「だから言う通りにしてるじゃない! ……そっか、まだ力が全然足りてないのね。よぉーし!」
――おい、ちょっと待て。なんか勘違いしてないかこの娘? 変にエスカレートする前に止めなきゃ――
――ギャリギャリギャリッ!
「ひぎゃあああッ!」
「だからなんなのよ、もうッ!」
「こっちが聞きたいわッ! なんで無心にテーブルをガリガリ引っ掻いてんだよ! 俺を勉強開始前から精神的に抹殺する気か!?」
「だ、だって矢村さんが『テーブルかいて』って……!」
やっぱり勘違いしてるぅー! んなわけねーだろうがッ!
「あのな、矢村が言ってる『かいて』ってのは、『運んで』って意味なんだよ!」
「……え? なにそれ」
「そういう方言なの! 矢村の地元の!」
俺の指摘にポカンとしていた救芽井は、やがて自分の勘違いに気づき、そして――
「さ、先に言ってよぉぉぉーッ!」
――恥ずかしさから真っ赤に染まった顔を隠すかのように、真横に拳を突き出し……テーブルを粉砕してしまった。
勘違いで散々引っ掻き回された挙げ句、八つ当たりで破壊されてしまった悲劇の木造建築の破片が、音を建てて崩壊・離散
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