第17話 船出から座礁
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していく……。
――船出から座礁ってレベルじゃねぇ。これはもはや、怪獣の域だぞ。こんなんでまともな受験勉強なんて出来るわけがない。
ついでに言うと、俺の身が持つわけがない。
「……アンタら、さっきから何しとんの?」
――矢村のツッコミが、耳まで届くはずもない……。
◇
結局、俺達は場所を移して居間で勉強会を開くことに。救芽井にテーブルを壊されたため、自室で三人揃って勉強するのは困難だからだ。
つーか壊れたテーブル、どうしてくれんだよ全くもぅ……。正義の鉄拳で破壊するのは悪の野望で十分だろうがッ!
「コラッ! ボーッとしない! そんなんじゃいつまで経っても終わらないわよ!」
そんな俺の苦悩をガン無視して、救芽井が叱咤してくる。いや、完全にあんたの所業に苦しめられてんですど。俺、今は百パーセント被害者のはずなんですけど。
しかも、頭抱えてる俺の反応見て、二人そろって「もう、ダメなコねぇ」みたいな顔でクスクス笑いあってんですけど。学校でのイジメなんてメじゃないレヴェルなんですけどォーッ!?
「あーもう、それにしても変な回答ばっかり! あなた、本当に真面目にやってるの?」
「大真面目だっての! 矢村が、『わからないなりに考えて、とにかく空欄を埋めていくのが大事』って言うから、俺なりに必死に考えた結果がこれだよ!」
「……矢村さんにそれを言われる前は、空欄ってどれくらいだったのよ?」
「全体の七割くらい」
それを聞いた途端、救芽井は思い切りため息をついた。黙ってその隣で勉強の推移を見守っている矢村までもが。それはもう、露骨なまでに。
「なんだよッ!?」
「あなた、よくそれで『受験』をやろうなんて言い出せたものね。世間に喧嘩売ってるのかしら?」
なかなか手厳しいことを言う。今まで三割くらいまでしか回答できなかったようなテストが、矢村のアドバイス一つのおかげで、九割以上まで埋められるようになったってのに! 合ってるかどうかはこの際別にして!
「言い出したアタシが言うんも難やけど、これはこれで龍太が何をわかってないかがわかりづらくなってしまうかも知れんけん、ためにならんかもなぁ」
「な、なんとぉー!?」
「例えばこれ。『しかと』を使って単文を作りなさいって言う国語の問題やけど」
おお、これは今時風な言葉で、実に簡単そうな問題だったじゃないか。採点したらなぜか間違いだったけど。
「『しかと承りました』とかっていうような意味で使うもんやのに『しかと決め込みました』って……あんたのことやから、これ絶対『無視する』ってニュアンスの『シカト』で解釈しとるやろ」
「え、違うの?」
「――合っとるって思っとるようなあんたの頭から、治していかないかんような気さえし
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