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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
人狩りの夜 3
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きちんとした師匠がいたんだな。その魔闘術とやら、興味がある。縁があれば俺もその翁さんにご教授願いたいものだ。なにせ俺の空手はまだまだ未熟でね。だから武器を使わせてもらおうか」

 秋芳はテーブルクロスに手をかけると、一気に引き抜いた。
 速い。テーブルの上の食器や燭台は、微動だにしない。
 そのまま腕をまわすと、テーブルクロスは雑巾を絞ったように巻き固まる。
 布棍だ。

「……? 【ウェポン・エンチャント】したわけじゃないわよね、それ。でも、魔力が宿っている。あなたも魔闘術の心得があるの?」

 秋芳のいた世界の見鬼ほど正確ではないが、ルヴァフォースにも霊的な感覚の鋭い人は存在する。【センス・オーラ】を使わずともなにか魔術的な作用の有無を直感できる人が。ペルルノワールの優れた感覚は布棍に込められた秋芳の気を感じ取った。

「魔闘術ではないが、まぁ、そんなところだ」

 気を張り廻らせて肉体を鉄のように硬化させる鉄布衫功の応用で、手にしたテーブルクロスをほどけないように絞り上げ、硬質化したのだ。

「ヒージャーグスイもシェーブルチーズもハブ酒も……俺はけっこう動物好きだから、こいつをたおすのは心が痛むな」
「あなたのその『好き』って、食べものとしての好きじゃない?」

 最初に動いたのはキマイラだった。黒山羊の口が呪文を唱える。

「《穢れよ・爛れよ・朽ち果てよ》」

 第二ラウンドを告げる酸毒刺雨が大広間のなかを降りそそいだ。

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