人狩りの夜 3
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その前にペルルノワールが割り込む。
「おい!」
「ここはわたしにまかせて」
先ほどのゲスな哄笑に込められた、いやらしい展開を期待する観客たちの鼻をあかすつもりだ。
ペルルノワールの漆黒のマントがひるがえり、戦棍を受け流す。
受け流すと同時にマントがミノタウロスの胴体に吸い込まれるように斬り込まれた。
ミノタウスの厚い胸板から激しい血しぶきが上がる。
鉄の盾で受け止めても衝撃で腕をへし折られるような圧倒的な剛力を受け流し、鋭利なすそで斬撃をあたえる。
武器と鎧と盾の役割を果たす、ペルルノワールの身にまとうマントはただのマントではない。
魔導具だ。
だがミノタウスはまだ倒れない。人ならば一撃で戦闘不能になる深手を負って苦悶と怒りの声をあげ、ますます猛り狂っている。
戦棍の連打がペルルノワールの身に降りそそぐ。まともにあたれば彼女の華奢な体なぞ、一撃でへし折れてしまうことだろう。
だが、その身につけたマントのみならずペルルノワール自身もただの人ではなかった。右に左と体を動かし、マントを閃かせて戦棍の猛打を紙一重で避け続ける。
彼女はミノタウロス相手の接近戦で、一歩も退かないのだ。
そして避けると同時に、細剣で突く。マントで斬る。
(攻撃を左右に散らし、転身することによる遠心力を利用して突く。円滑な重心移動がなければできない芸当だ。まるで一流のダンサー並の身体能力だな)
秋芳は下手な格闘家などより、ダンス。特にクラシックバレエを習っている者のほうがよほど強いと思っている。よく鍛えられた下半身と体軸により身体の軸が安定し、重心を瞬間で取れる。基本的な身体能力も高く、背筋や腹筋をはじめ全身の筋肉も強靭で体力、スタミナに優れ柔軟だ。
戦闘に必要な要素をすべて持っている。
舞踏は武闘に通じる。
剣とマントの舞によってミノタウロスの全身が赤く染まり、さすがに動きが鈍くなった。
それを見逃すペルルノワールではない。
レイピアが一閃しミノタウロスの顎に下から突き刺ささる。
血と脳漿のついた先端が頭頂部から突き出る。脳を貫通していた。
二度、三度と痙攣して弱々しい鳴き声を漏らすと、さすがのミノタウロスも息絶えた。
相手を血だらけにした美少女仮面の身には返り血ひとつついていなかった。
「…………」
予想外の展開に鳳凰の間に並ぶ貴族たちは言葉を失った。
怪盗としての噂は名高いペルルノワールだが、これほどの武技を持っているとはだれも思いもしなかった。
正体は若い娘のようなので、庶民の間で人気があるが所詮は泥棒。少しばかり盗みの技に長けただけの義賊と称するコソ泥風情にミノタウロスを一方的にたおす実力があることに驚愕した。
ここにきて貴族たちにはじめ
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