精神の奥底
71 Revolt 〜前編〜
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あれから僅か数分、歩いた距離にして1キロも無いというのに、自分がまるで別人になったような気がした。
自分とすれ違う人は皆、誰も自分のことを気に留めない。
気に留めたとしても軽く会釈をし、自分もそれに返す程度だ。
いつもならば、間違いなく注目の的となっていることだろう。
見た目が変わるだけでここまでも変わるものかと驚かずにはいられなかった。
『ロックマン、次の角を右です』
「了解。そっちもよろしく」
普通に無線機を使用しても、やはり誰も気には止めない。
仕事関係のやり取りをしているようにしか見えないのだ。
この時、改めてロックマンは人間の外見と身体を羨ましく思った。
思わず手に持った食事のトレーを強く握りしめてしまう。
ここまでの行動は全て普通に人間がやっていなければ不自然なものばかりだった。
いくらロックマンが人間に限りなく近い外見を持ち、人間と同じ心を持っていたとしても、ネットナビがやってしまえば、全て不自然に映ってしまう。
今はリサが作った実在の女性の3Dモデルのドレスアップデータと声紋データで本物そっくりになりすましているからこそできる芸当である。
本当は熱斗を救うために集中しなければならないはずが、不思議ともし自分が普通の人間として熱斗の側にいられたらとどんなにいいだろうと考えてしまう。
「……あっ」
しかし、そんなことを考えているうちに目的地のすぐ側までやってきていた。
『中には看守が1人、それも今、あなたがなりすましている女性局員の同僚です』
『可能な限り交わす言葉は少なくしつつ、怪しまれないようにするんだ』
『難しいと思うが、頑張ってくれ』
無線からはリサの他に炎山と祐一朗の声が聴こえる。
あと1人の報告があれば、すぐにでも目的地へと入る。
『ですから…その…あの……』
『おい!笹塚?そっちは?』
『この間はオレも心の準備ができてなかったっていうか……でもオレも……貴方のことは嫌いじゃないし……』
『…この間のことは忘れてちょうだい。別にちょっと酔ってただけだから…….』
『でも……』
『あの……笹塚さん、急いでもらえます?』
無線から聞こえてきたのは、今、ロックマンがなりすましている女性を足止めしている笹塚の声だった。
ロックマンが目的地に入れずにいるのは、作戦中に本物と鉢合わせしたら計画が一瞬で頓挫するからだ。
彼女がいる食堂からここまでの距離は決して近いわけではないが、走ればものの数分だ。
特にサテラポリスの訓練を受けている者ならば、想定よりも遙か早く着くのは想像に難くない。
『だからその……』
『笹塚くん、もうかっこいいことを言おうとか考えなくていいから、思ったままに言ってごらん!』
そこに祐一朗が助け舟を出した。
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