精神の奥底
70 海での再会
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まだ完全に意識が戻っていないにも関わらず、不思議と嘲笑いが零れる。
そして気づけば、海面から顔を出していた。
「うっ…あぁ……ここは……」
力が入らない彩斗を少女は陸地へと引き上げる。
そこには見たことの無い風景が広がっていた。
何処かの海岸だろうか、誰ひとりとしていないビーチが広がる。
この世界に来て始めてみた美しい光景だった。
きめ細かく、クッションのように柔らかい砂浜とかなり小さいが鬱蒼としたジャングルが見える。
そして空を見上げられば、僅かに星と星が照らしているが、ほとんど雲で覆われて真っ暗だ。
「ここは島みたい。とてもとても小さい島」
「島……?」
「この世界に陸地はここしかない。あとはどこまで行っても海だけ」
「他には……誰かいるの?うっ……」
「いいえ。私と…あなただけ」
少女は立ち上がろうとしてバランスを崩した彩斗を受け止め、自分の膝の上に寝かせる。
「そっか…ならいいか」
そう言って、力の抜けた顔で一瞬だけ笑みを浮かべると、次の瞬間には悲しみで顔を歪ませた。
意識がはっきりとする程に徐々に記憶が戻ってくる。
これまで理不尽に受けてきた暴力の痛み、心を鬼にして奮い続けた暴力、ずっと信じていたものから受けた裏切り、少しずつ普通の人間で無くなっていくことへの恐怖。
思い出せば思い出す程に押し殺したような泣き声と涙が流れてきた。
「うっ…うぅ…うぅぅ……」
「好きなだけ泣いていいの。好きなだけ」
自分の情けない顔を見られたくなくて、力の入らない手で顔を隠そうとする。
だが少女はその手を握って、頬に触れた。
「うぅ…こんな……顔……見ないで……」
「大丈夫、笑ったりしない。私を見て」
「うぅぅ…あぁ……」
「何があっても私はずっとあなたの味方。あなたを絶対に見捨てないから」
「うぅ…うぁぁぁ!!!」
波の音しか聞こえない世界に叫び声が響いた。
これまで抱えてきたものを声にならない叫びで吐き出し続けた。
悲しくて、悔しくて、涙が止まらない。
涙が流れる度に彩斗はロキの子でもなく、シンクロナイザーでもなく、ましてスターダストでもない1人の少年、1人の人間に戻っていく。
強がった仮面の下にいつも恐怖や弱い面を抱え、時には無様に泣き喚くこともある普通の人間に。
「大丈夫。大丈夫だから」
心の傷は簡単には癒えない。
それでも人は簡単に傷を抱えたままでも前に進むしか無いと言う。
だがその成れの果てである彩斗を見てもそれが言えるだろうか。
傍から見れば、前に進めなくなった彩斗を落ちこぼれの烙印を押し、置き去りにするのは簡単かもしれない。
だが少女とこの世界はそんな傷だらけの彩斗を拒むこと無く、優しく受け入れた。
時には無様に泣き喚いて
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