暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜剣と槍のファンタジア〜
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2章 生き様
11話 オールラウンダーの2人
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た。これはリアがとても気に入っているコーヒー(のような飲み物)だ。あまり酸味が好きでないリアの好みに合わせ、苦みを引き出した一品で、リアが今まで作成したコーヒーの中でトップのできだろう。シリカのは、ミルクと砂糖たっぷりのカフェオレだ。

「美味しい…」

 目を真ん丸くしたシリカに、リアは嬉しそうだった。
「あの、これは…」

「これは私が作ったコーヒーなんだ。NPCレストランは、持ち込みができるの」
「え、コーヒーって作れるんですか?」

「これがなかなか難しくてね、料理スキルと調合スキルをマスターしてなきゃ作れないんだ」
「へぇ、そうなんですか…このコーヒー、今まで飲んだ中で一番おいしいです」
「そういってくれて嬉しいな」

 リアのうれしそうな顔にシリカも笑い返し、再びカップに口を付けた。




 やがてカップが空になると、徐々にシリカの顔が曇っていくのがリアにもわかった。先ほどのことを思い出しているのだろう。

「どうして…あんな意地悪なこと、言うのかなぁ…」
 
 シリカの言葉は、つぶやき程に小さいものだった。先ほどの笑顔はリアの顔からは消え去っている。

「シリカは、MMORPGをやるのは初めて?」
「はい…」

 リアはカップを置き、背もたれに寄りかかった。

「私もね、そこまでゲームをやってきたわけじゃない。だから確信みたいなものをして言えはしないんだけど…ゲーム内に入ると、人格が変わる人は大勢いると思う。もちろん、それはただのゲームだし、それがRPGの醍醐味といえる。だけど、SAOは違う」

 リアはそこで言葉を切り、息を吸った。
 
「このちっぽけなHPバーが吹き飛んだら、現実世界の私たちも死ぬ。つまり、自分の命が可視化されているというだけで、現実と何ら変わりはない。こんな世界で、唯一ないのは…法律だよ」

「法、律…」


 リアはゆっくりとうなずいた。

「法律がなくなった世界で、人はどうするか。…現実世界にたとえ戻れても、この世界でのことで逮捕されるなんてことはない。罰せられないから、犯罪を犯す。…この世界には、人間の鏡のようなものだと思うよ」
「人間の、鏡?」

「そう。何にも縛られていない。何をやってもいい。そんなとき、あなたはどうしますかって。つまり、現実世界で違法とされているものをこの世界でやる人は…きっと現実世界でも、そういうことをやりたいとずっと思ってた人なんだろうね」

 リアは、そこまで言うと、ゆっくりと息を吐いた。うつむき気味の瞳には、憂いとも、悲しみともとれる色が広がっている。

「もちろん、強制されてやる人も中にはやると思うよ。だけど、そういう人も、自分のしてしまったことに対して、これから罪を償わなければいけない…
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