暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
涙雨
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と鳴り続ける歌そのものなのだと、蒼穹へ響いていく……

「……ふぅ」

 ……と、Bパートをカットしたために多少は早くなってしまったものの、それでも全力で躍りながら歌った後はVR世界だろうと疲労は残る。レインの吐息とともに、ショウキからの拍手が店内に響き渡った。そんな情熱的な拍手とは対称的に、ショウキがステージ上にいるレインに向ける表情は苦笑でいて、そんなレインも照れ笑いで返すしか出来なかった。

「なんていうか……ありがとね、ショウキくん」

 さっきまであんなに陰鬱な気分でいたのに、ショウキに乗せられて歌を一つ歌ってみせただけで、そんな気分は雲散霧消してしまっていたのだから。まがりなりにも彼に全て愚痴を聞いてもらったからか、ライブ前での彼のおだて方が上手かったのか、それとも……レイン本人が考えたくないほどに単純なのか。とにかく彼のおかげで吹っ切れたのは間違いないと、お礼を言ったものの芳しくなく。

「俺は歌を聞かせてもらっただけだから、こっちがお礼を言いたいぐらい、だ。それで……どうだ?」

「うん……」

 そういえば、愚痴を聞いてもらったのは独り言という体だった、と思い返して。不器用にとぼけるショウキに笑みを浮かべながらも、ショウキから再び発せられた問いには真剣に答えるべく、レインは彼からの問いかけを思い返す――すなわち、どうしてアイドルを目指したのかと。

「……私、歌うのが好きなんだなーって。だからアイドルなんて目指してるの、単純でしょ?」

 セブンのこともユナのことも、ただの言い訳にしか過ぎずに、照れ屋だろうと歌うことが好きだからだと分かっていたはずなのに。ちょっと悪いことが重なっただけで、自分は何をしていたんだろう――と、レインは今更ながらに穴へ潜りたい気持ちに晒される。随分と迷惑をかけてしまった、何を聞いたか忘れてほしい、ああでも独り言って体になってるんだっけ……と、内心にも留めずにレインがあわあわとしていたが、ショウキは全くそれには構わず。

「……だってさ」

「スパシーバ、ショウキくん。それに、やっほー、お姉ちゃん」

「せっ……セブン!?」

 どこかに話しかけているかと思えば、ショウキの視線の先にはレインの最愛の妹の姿がいて。商店街だからか変装はしていたものの、その程度でレインの目は誤魔化せない……というか、セブンだと分からないようにオシャレをしているため、目を引いてしまうのは変わらないというか。

「な、何で、セブンが、その、どうしたの?」

「え? お姉ちゃんったら、悩み事があるならショウキくんのとこに行くでしょ?」

「いや、それは違……むぅ」

「また作戦会議しよう、と思って来てみたら、いいモノを聞かせてもらった……って訳」

 などと現実逃避しなが
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