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SAO−銀ノ月−
涙雨
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がらも急造のステージに昇っていく。まさかショウキが本当に、レインのソロ曲を聞きたいからとステージを作った訳ではないだろうと、何か考えがあるのだろうという信頼感もあったからだ。

「ショウキくんが好きなのって神崎エルザさんだっけ? アレとはちょっと方向性が違うかなー」

「新しいジャンルの開拓を頼む」

「おやおや〜。メジャーデビュー前にファン獲得ですかな?」

 ただ簡単に乗せられてしまったような感覚には陥るものの、レインとしても歌うからには真剣であり、悩みや自己嫌悪などその後だ。適当な軽口を叩きながらも、ショウキが造ったステージをチェックしていく。もちろん彼を信じていないわけではないが、いかにもな急造品のためにダンスやパフォーマンスに耐えられるかどうか、というチェックは必要不可欠だった。

「ん……よし」

 見立てでは大丈夫だったが、試しに軽くステップを一つ。ミシリ、というちょっと不安になる音はしたものの、とりあえずは大丈夫そうだとレインは判断する。ステージ開始だとショウキの方を振り向いてみれば、今の異音に冷や汗を流していたようで、大丈夫だと安心させるポーズを取っておくとともに。

「……別に、わたしが重いから音したわけじゃないからね?」

「何も言ってないし思ってないぞ」

「よろしい。じゃあ……始めるよ」

 ……最後に、ちょっとした指摘を念のために。何を怖がっているのか、手を挙げて降伏の意を示しているショウキをよそに、レインは深呼吸を一つ。今までの鬱屈した心理を吐き出して、血の滲むような練習の日々を吸い込んでいく。

『ずっと鳴り続けるのは――』

 そうして鬱屈した気持ちの代わりに口から吐き出されていくのは、レインの持ち歌の中でも最もお気に入りの、七色が発表している一曲の一つ。もちろんBGMなど流れない簡素なステージではあったものの、その分は自分がカバーするべきだと、レインは普段より派手にステップを刻んでいく。

 何があろうと頑張っていけるのは、彼女との思い出があるからだ。今は遠くにいて彼女には会えないけれど、彼女の笑顔を思い出せば、どんな悲劇だろうと乗り越えてみせる、と。彼女も同じことを思っているだろうか――そうであれば嬉しいけれど、もしも寂しがっているのならば、彼女の笑顔のおかげで元気な自分の声を、風が届けてくれないだろうか。

『蒼穹に響け――』

 そう、願って。彼女が好きだった歌を口ずさむけれど、もちろん遠くにいる彼女へ届くなど無理な話だ。それでもこうして彼女に向けて歌うのは――

『――Song to Cynthia』

 ――必ず彼女の元に帰るという決意のためだ。例え空を飛ぼうが、時を越えようが、必ず彼女の元へ帰るのだと。それほどまでに彼女は自身の支えであり、ずっ
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