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SAO−銀ノ月−
涙雨
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んにレインへと襲いかかってきた。妹に何もかも及ばないような、勝手に託されておきながら親友の願いを重荷扱いするような、こんな最低な人間ではなくて、幼い時から天才少女として育てられてきた七色になっていれば。ただ自分が一時の苦しみから逃れるためだけに、デスゲームのおかげで仕事を貰っていることを否定出来ないような、一番に自分が嫌いな人間にならなくてすんだのに。

「あ……ごめん。背中、シワになっちゃってる」

「レインは、優しいな……出来た」

「え? ショウキくん、今なんて……え?」

 そうやって自分で勝手に話をした後に、どうでもいいことで煙に巻く――そんなところも大嫌いだ、とレインは自分でも不思議なくらい冷静に自分をけなしながら、ショウキの背中から手を離すと同時に。レインの勝手な告白が始まってから、ようやくショウキから返答らしい返答が小さく告げられたが、レインには上手く聞こえずに。

「何、これ?」

 振り向いたショウキに聞き返そうとしたレインは、今まで彼の背中しか見ていなかったが故に見えなかった、店内の向こう側に返答を聞き返すことも忘れて言葉を失った。素材を収納してあった頑丈な木箱やショウキが回収していた鉄系の素材が床に敷き詰められていて、普通の床より一段高い場所を形成している上に、そこに灯りが当たるようになっていて、まるで――

「何って……ステージだよ。即席で雑な手作りだから、プロにはそう見えないだろうけど」

「いや、ステージにはギリギリ見えるけど、わたしが聞いてるのはそういうことじゃなくて!」

 ――とてつもなく簡素なものではあったものの、それは確かにライブステージだった。気がつけば出来ていたソレに気を取られて、レインは先程まで感じていた自身への嫌悪感をも忘れて、驚きながらもショウキを問い詰めてしまう。

「なんでステージなんて作ったの? って聞いてるの! もう……」

「レインのソロ曲、聞いたことがなかったから。それに、レインがどうしてアイドルになりたいのかも」

「わたしが、アイドルになりたい理由……?」 

 慌てたレインからの問いかけに対して、そしらぬ表情のままショウキは椅子など用意していて、すっかりステージの前で歌を聞く準備を整えていた。そうしながらもショウキが逆に問い返してきた、『アイドルになりたいと思った理由』には、レインは言葉に詰まってしまう。最初は『託された親友(ユナ)の夢のため』と答えようとしたが、それはあくまで目的の一つであり、理由やきっかけではない。

「……いいよ、歌ってあげる。こんなサービス、めったにしないんだから。光栄に思うといいですぞ、ショウキ殿?」

「せいぜい、末代までの自慢にするよ」

 結局、ショウキの問いに答えられなかったレインは、不承不承な
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