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歌に生き愛に生き
第一章
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歌ってくれというのね」
「そうしてくれるかな」
 ピアノとジョルジュを交互に見て彼女に願う。
「また一曲演奏するから」
「いえ」
 だがジョルジュはショパンのその願いに首を横に振った。
「今日はもうね」
「歌いたくないの?」
「気分じゃないわ」
 だからだというのだ。
「貴方には悪いけれどね」
「そうなんだ」
「私は私よ」
 ショパンにもこの言葉を言うのだった。
「私の歌いたい時に歌ってね」
「恋をしたい時にするんだね」
「恋は鳥よ」 
 ジョルジュは微笑んでショパンに言う。
「気ままに飛ぶものなのよ」
「だから今日はもう歌わないんだね」
「そうよ。ベッドに行きたいけれどいいかしら」
「僕は暫くここにいるよ」
 身体の弱いショパンはベッドよりもピアノを選んだ。
「心を癒したいからね」
「そうするのね」
「また明日ね」
 明日自分のピアノでジョルジュに歌って欲しいというのだ。
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