第三章
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「僕が行くよ」
「猫ちゃんを助けに?」
「うん、行くよ」
こう言うのでした。
「これからね」
「どうして助けるの?そんな道具周りにないけれど」
「決まってるよ、何もないならね」
それならというのです。
「泳いで行けばいいんだ」
「川を?」
「そう、川をね」
子猫がいるその川をというのです。
「そうすればいいんだよ」
「けれどそんなことしたら」
どうなるか、美也子は御兄さんを心配する顔で言いました。
「お兄ちゃんが溺れない?」
「僕泳げるから」
「まだお水冷たいんじゃ」
「準備体操をするから」
実際に今その場で準備体操をはじめています。
「大丈夫だよ」
「じゃあ本気なの?」
「そうだよ」
もう返事に迷いはありませんでした、それも一切。
「だからね」
「今から行くの」
「猫ちゃんを助けにね」
「そう、じゃあ」
お兄さんの決意を聞いてでした、美也子は。
自分も準備体操をはじめてです、そのうえでお兄さんに言いました。
「私も行くわ」
「美也子も?」
「一人より二人の方がいいじゃない」
だからだというのです。
「それでね」
「行くんだ」
「ええ、そうするわ」
こう言うのでした。
「お兄ちゃんだけだったら何があったら駄目だからな」
「それでなんだ」
「行こう、一緒に」
子猫を助けにというのです。
「そうしよう」
「それじゃあ」
俊一は美也子の勢いに押されて頷きました、それ以上に妹も一緒にと言ってくれたことが嬉しくて。そしてでした。
二人で服を着たまま川に入りました、川は思ったより浅く二人の腰までしかありません。それで二人で川の中を歩いて進んでです。
子猫のところまで行って俊一が抱き抱えてです、そのうえで川から戻しました。そうしてでした。
川を出たところで、です。俊一は自分の濡れた脚や腰のことは気にしないで美也子に言いました。
「すぐにお家に帰ろう」
「お家に?」
「だって美也子が濡れたから」
見れば俊一と同じく腰から下がびしょ濡れです、さっきまで川の中にいたのですから当然です。
「早く帰らないとね」
「風邪ひくから」
「だからだよ」
まさにそれが理由だというのです。
「もう帰ってね」
「それで服を着替えて」
「身体をタオルで拭こう」
「わかったわ、あと猫ちゃんは」
「とりあえずお家まで連れて行こう」
今は俊一の中で落ち着いています。
「そうしてお母さんにどうするか聞こう」
「そうね、お母さんが言うことならね」
「間違いはないからね」
優しくてしっかりしたお母さんの言うことならというのです、こうお話をしてそうしてでした。
二人は子猫を抱いたまますぐにお家に戻りました、そしてお母さんに何があったのかをお
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