第一章
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好みは複雑
内山秀太はかなりの変わり者と呼ばれている、何しろどんなアイドルにも女優にも興味がないと言って実際に関心の素振りも見せない。
それでだ、高校のクラスメイト達はいぶかしんで彼に尋ねた。
「御前女に興味ないのか?」
「誰にも反応示さないな」
「どんな女優さんでもアイドルでも」
「全然な」
「そう言われるとな」
面長で暑い唇に丸い目の顔だ、やや癖のある黒髪をセンターで分けている。背は高くすらりとしている。
「あるよ」
「いや、そう言ってもな」
「御前全然反応示さないからな」
「水着のグラビアも観ないだろ」
「エロゲもしないんだって?」
「そうしたビデオも観ないんだろ」
「漫画とか小説も持ってなくて」
それこそというのだ。
「そういうの見てたらな」
「ちょっとな」
「女に興味あるのかって思えるんだよ」
「ホモじゃないよな」
「ああ、違うよ」
実際にとだ、秀太は友人達に答えた。
「俺は絶対にホモじゃないから」
「じゃあ誰が好きなんだよ」
「女の子が好きっていうんならな」
「実際にな」
「それ誰なんだよ」
「アイドルとか女優じゃ誰が好きなんだよ」
「一体な」
友人達は秀太に問うた、だが彼はこう言うのだった。
「アイドルや女優じゃないんだよ」
「タイプはか」
「そうだっていうのか」
「そうだよ」
実際にというのだ。
「俺のタイプじゃないんだよ」
「AKBでもハロプロでもか」
「誰もいないのかよ」
「女優さんでもグラドルでもか」
「一人もか」
「AV女優でもか?」
「そうなのか?」
「ああ、本当にな」
それこそとだ、秀太は言うばかりだった。それで友人達は彼のその言葉を受けてそのうえで言った。
「好みの人がいないか」
「そうした世界には」
「それで周りにもか」
「いないんだな」
「そうなんだよ、若しタイプの娘がいたら」
それこそというのだった、秀太にしても。
「アイドルや女優さんだったら応援するよ」
「本当にか」
「そうするんだな」
「俺だってな、本当にな」
実際にと言うのだった。
「何度も言うけれどホモじゃないからな」
「風と木の詩じゃないんだな」
「山川純一さんでもないか」
「田亀源五郎さんでもないか」
「だからそういう趣味じゃないんだよ」
秀太はこのことは強く言い切った、間違ってもそうした世界に興味はないというのである。
「何がいいんだよ、ああした世界って」
「いい人にはいいみたいだな」
「風と木の詩って名作って評判だしな」
「田亀さんなんかカルト的人気があるしな」
「絵柄も」
「お好きな人にはたまらないってな」
言われているとだ、友人達は秀太に話した。
「よく言われてるな」
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