第三章
[8]前話
「せめてどうして気持ち悪いって言わないと」
「駄目なんだね」
「そんな人と付き合ってもいいことないですから」
人を外見だけで判断する人間とは、というのだ。
「子供の頃もそう言われましたし」
「そうだね、人は顔じゃないっていうけれどね」
河原崎も内藤が正しいと思い答えた。
「その通りだね」
「ですから断りました」
「まあそうした相手だと」
内藤を容姿だけで判断して前は気持ち悪いと言って今は告白する様な掌返しをする人間はというのだ。
「碌な人間じゃないしね」
「凄く蔑んだ顔で僕を気持ち悪いって言ってたんですよ」
「君はそのことを覚えていたんだね」
「絶対に忘れないですよ」
顔も言葉も明るかったがその中にははっきりとした恨みがあった、忘れていないという何よりの証拠だ。
「本当に」
「そうだね、断って正解だったよ」
「人を外見で判断する様な相手の告白は」
「君が事故で顔にでも怪我したら」
「その時はですね」
「振るに決まってるからね」
彼の内面なぞ一切見ずだ。
「そうするからね」
「だからですね」
「断ってよかったと思うよ」
「僕もそう思います、じゃあ今日はこの雑誌買わせてもらいます」
手に持っているそのファッション雑誌をというのだ、ティーンズの少年用の雑誌で最近毎月買っている。
「そうさせてもらいます」
「いつもうちで買ってくれるんだね」
「だって僕店長さん好きですから」
それでとだ、内藤は河原崎に明るい笑顔で話した。
「ですから」
「だからかい」
「はい、僕が太っていた時から仲良くしてくれましたね」
それでというのだ。
「ですから」
「それでかい」
「こうしてです」
「うちで買ってくれるんだね」
「そうです」
「まあこうした商売だしね」
本屋だからとだ、河原崎は腕を組んで内藤に話した。
「色々な外見の人が出入りして」
「本を買って」
「内面も観るから」
その店を出入りする人達のというのだ。
「顔はよくても乱暴な人がいたり」
「その逆の人もですね」
「いるからね、人は外見じゃないってね」
そのことがというのだ。
「僕もわかってるから」
「それで、ですか」
「君の内面は好きだからね」
外面、かつてのそれは一切気にしないでというのだ。
「こうして話もしてるんだ」
「そういうことですか」
「じゃあ今日はその雑誌をだね」
「買わせてもらいます」
そしてファッションの勉強をするとだ、内藤は河原崎に話した。告白を振ったその顔は実にさばさばとした明るいものだった。
気持ち悪い 完
2017・8・18
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