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ブラックウィドー
第二章
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「だからな」
「ですよね。私も従軍牧師になりましたけれど」
「オカルトめいた話はな」
「本当に多いですね」
「全滅した筈の部隊が救援に来たりとかな」
「はい、あります」
 こうした話もあるのだ。
「その他にも色々ありますからね」
「そうだな。だからな」
「呪いとかの可能性もありますね」
「その他には」
「毒でしょうか」
 牧師はこのケースについても言った。
「それでしょうか」
「それを真っ先に考えるべきか。それに」
「それに?」
「蛇か」
 博士はここで周囲を見た。そこは見事な荒野で赤い大地が見えるばかりだ。
 その大地を見ながらこう言うのだ。
「こうした場所にはな」
「いますからね、蛇が」
「サイドワインダーもいる」
 ヨコバイガラガラベヒだ。アメリカを代表する蛇と言っていい。
「それに噛まれたということもな」
「充分有り得ますか」
「正直蛇も厄介だ」
 騎兵隊の敵はインディアンばかりではないのだ。こうした存在も厄介なのだ。
「それに」
「それにとは?」
「蜘蛛だが」
「蜘蛛!?」
「蜘蛛のことは知らないか」
「初耳ですが」
 牧師は怪訝な顔で博士に答えた。
「蜘蛛が何か」
「ここにいるかどうかはわからないが蜘蛛も危険だ」
「毒蜘蛛が合衆国にいるのですか」
「そうだ。蛇の他にな」
「ううむ、そうなのですか」
「牧師殿は生まれは確か」
「オーガスタです」 
 牧師はそこだと答える。
「メーン州の」
「合衆国の一番北だな」
「はい、かなり寒いです」
「それなら蜘蛛がいなくて当然だな。それに」
 牧師は従軍牧師になって間もない。軍のことはそれ程知らないのだ。
 博士はこのことからも言うのだった。
「まだ合衆国の広さを知らない」
「確かに広い国ですけれどね」
「色々な生き物がいるのだ。牧師殿はこれから知ることだが」
「それで、ですか」
「そうなのだ。若しかして」
「村の事件と関係ありますか」
「まずは村に着こう」 
 全てはそれからだというのだ。
「そして調べよう」
「全てはそこからですね」
「そういうことだ」
 こうした話をして二人でその村に赴いた。着いた村はあまり大きくはない開拓の頃の雰囲気がそのまま残っている村だった。そして二人が着いたその時にだ。
 葬式が行われていた、墓で人々が嘆き悲しんでいた。
 博士と牧師、特に牧師はその仕事柄すぐにそこに向かった。そして話を聞くと。
「まだ十歳の子供が」
「朝は元気だったんです」
「それがなんです」
 子供の両親達が泣きながら二人に話す。
「急に死んで」

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