第13話 おまわりさんおれたちです
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――さて、矢村と会った頃のことをおさらいすると、だいたいこんな感じだが……彼女は何が言いたかったんだろうか?
その旨を尋ねてみても「ど、どうでもええやろ!」とはねつけられてしまうので、俺には結局知る由がない。
まぁ、向こうは俺が昔のことを思い出してるのを、隣で嬉しそうに見てたし……本人の機嫌が直ったんなら、それでいいか。
「え、な、なんや?」
「いや――なんか嬉しそうだなってさ」
「そらそうやろ! だって……な、なんもないっ!」
「ないのかよ……」
つくづく、言ってる意味がわからない。もしかしたら俺がそれを知らないだけなのか?
そんなことを考えてるうちに、俺達の視界は夜とは思えない程に明るくなってきた。
――イルミネーションが眩しい、商店街の景色。
「わぁ、き、綺麗やな〜……。毎年こういうの見れるって、ええわぁ〜!」
「だな。まぁ、クリスマス当日の方が盛り上がってんだろうけど」
商店街を包んでいる光の群れは、入口にある店の看板からその屋上までの全てを彩り、その鮮やかさは町全体にまで広まっていた。
何色ものベルを飾り付けられたクリスマスツリーに、サンタやトナカイに紛して宣伝を行うおじさんやおばさん。雪だるま型の置物を真似て、それの隣に本物の雪だるまを作ろうとする子供達。
町のみんなの笑顔も相まって、今日がクリスマス当日なのかとさえ思う程だ。
惜しむらくは、そんなエキサイトしたくなる時期に受験勉強をしなければならない、という現実が待っていることだが。
「さて、明日は一体どうなるのやら……」
無益と断じられた受験勉強に臨むか、救芽井の特訓に引っ張り出されるか……。いずれにせよ、明るい未来じゃないなぁ。
……だったら、せめて今夜は楽しく過ごしたいもんだ。
よし、ここは一つ、商店街の繁盛ぶりを拝見しながら矢村を送るとしよう!
俺は一先ず話題を作るため、近くにある屋台を指差した。雪とは違う純白にデコレーションされているそこは、他の店とは比にならない程の異彩を放っていたからだ。
「お、あそこにケーキ屋があるぞ。いつもは雑貨屋なのに……無茶しやがって」
「みんなクリスマスが楽しみやけんね! アタシも――すっごい、期待しとるけん!」
おや、なんかテンション高いぞ。ケーキ好きなのか?
「んじゃ、何か買ってこうか? クリスマスにはまだ早いけど」
「そ、そんな! ええよ別に! アタシ、返せる程お金ないし……」
「いや、俺の奢りだから。今日一日、勉強見てくれたお礼ってことでさ」
まぁ進歩はなかったらしいけどね。それでも気持ちはありがたいんだし、こういう小遣いの使い方したってバチは当たるまい。
だが、当の矢村は気に召さないのか「お礼したいんは
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