第13話 おまわりさんおれたちです
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離れた俺達は、寂れたベンチに腰掛ける。ふぅ、やっと落ち着けたかな?
「……ったく、滅多なことを人前で叫ばんでくれ。ただでさえ噂とか広まりやすいんだから」
そう。顔見知りが多いと、すぐにあることないことが知れ渡ってしまうのが、規模の小さな町の困ったところなのだ。
次に交番のお巡りさんに会ったら、必ず矢村について追及してくるに違いない。「龍太君、二股かい!?」とか言い出すビジョンが頭から離れん……!
「ごめんな? でも、アタシは大丈夫やで。――嘘なんか、ついてへんもん」
隣にチョコンと座っている矢村は、妙に真剣なムードで話を進めている。くっ、なんかマジメな態度だから怒りづらいな。
「龍太は、嫌なん? あーん、とかするの。それとも、アタシやからあかんのん? 救芽井とやったらするん?」
「なんでそんなに必死になってんだよ……。ていうか、なぜに救芽井が出てくるんだ」
「だって、龍太は『変態』って言われるくらいのことを救芽井にしたんやろ? アタシには、普通の友達みたいなことくらいしかしようとしとらんのに……ずるいやん」
拗ねたような口調で文句を垂れながら、矢村は上目遣いで俺を凝視する。おい、なんだその潤んだ瞳は! 可愛く見えちゃうからやめなさい!
「やっぱり、胸が大きいからなんか? アタシの胸が小さいけん、龍太は友達としかアタシを見んのん?」
「いや、別にそういうわけじゃ……」
「せ、せやったら、アタシのこともちょっとは見いよ! 救芽井より、ずっと大事にしちゃるけん!」
何を大事にするのか知らんが……一体、矢村はどうしちまったんだ? 俺を勘違いさせるようなことばっかり口走りやがって。
――そんなに、変態扱いされてる俺が哀れなのか。
「いいよもぉ、無理しなくて……」
「何言うとん? アタシ、無理なんかしとらん!」
「もう慰めなくてもいい! 惨めになるから!」
「そんなことない! あんたは、惨めなんかやない!」
くぉぉぉ、どこまで俺を見捨てまいとする気なんだ、お前はぁぁぁ!
そんなに情けを掛けられちゃあ、俺の立つ瀬がないではないかぁぁぁッ!
――と、俺が頭の中で悶絶していたその時。
足元に人影が映り込んでいたことに気がつき、俺はハッとして顔を上げた。「また人に見られてるゥー!?」と思ったので。
だが、そこにいた人物……いや、「存在」は、予想の斜め上を行くものだった。
そう。
俺達の前には、アレが立っていたのだ。
――いや、こう表現するとなんか卑猥なんで、簡潔に言い切ってしまおう。
「解放の先導者」が、現れたのだ。
……コマンド?
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