第12話 転校生は方言少女
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初のイメージをぶち壊す、男よりも男らしい女の子だったわけだ。
夏休み中も、二学期が始まってからも、彼女は男子以上に活発に動き回っていた。
それは別にいいことだろうし、性格的にも悪い奴じゃないとは思う……のだが、困ったところが一つだけあった。
「一煉寺ィ〜! あんた男やろ、しゃんしゃんせんかい!」
「ちょ、や、矢村、タンマッ……!」
――やたら俺を連れ回す、という点である。大して運動が好きでも得意でもない、俺を、だ。
なぜかはわからないが、彼女はサッカーやら野球やら柔道やら、俺が普段関わらないようなスポーツの世界に容赦なくぶち込んで来るのだ。
当然、俺は耐え兼ねて音を上げた。そんな俺の尻を、彼女がひっぱたく。それはもはや「お約束」だった。
まぁ、それはそれで運動不足の解消になったんだし、よしとしよう。
そうして、矢村は男子よりも強い女子として、その地位を高めていた。このままそれが続いていたなら、彼女の中学時代は実に充実したものになっていたに違いない。
しかしある日、俺は彼女をやっかいなトラブルに巻き込んでしまったのだ。
運動も勉強も中途半端でありながら、成績優秀・スポーツ万能な矢村と一緒にいる俺は、異端だったんだろう。なんの脈絡もなく、俺は出来のいい兄と比較される形で、一部の連中からいじめに遭った。
兄貴がその優秀さで有名なのは知っていたし、弟の俺がふがいないのも事実だった。だから、俺は抵抗することなく、いじめを「一般的な世間の評価」として受け入れることにしていた。
――だが、矢村はそれに反対した。
彼女は俺をいじめていた連中に突っ掛かると、全員にビンタをお見舞いしたのだ。「一煉寺は一煉寺、兄貴とはなんの関係もないやろが!」と。
まぁ、向こうはただ俺をいじめるための話題が欲しくて、兄貴を引き合いに出しただけらしいんだけどな。
だが、そこで連中は逆上してしまった。元々、彼らは俺のように勉強や運動で矢村に劣る「落ちこぼれ」であり、男勝りで勝ち気な彼女を快く思わない存在だったのだ。
俺をいじめようと思ったのも、彼女を狙うと支持層が黙ってないから。だから、代わりに「八つ当たり」をしようとしていたんだ。
連中は持っていたモップや椅子を振り上げ、矢村に殴り掛かろうとした。いくら男より強い彼女でも、数人に凶器を持ち出されたらどうしようもない。
俺は自分の撒いた種だからということで、彼らに飛び掛かって彼女を逃がすことに決めた。
別に、俺が殴られるのは構わなかった。どうせケンカは弱いんだし。
それに、俺の代わりに彼女が殴られたりなんかしたら、そっちの方がよっぽど「痛い」しな。
だけど、俺が殴られて血まみれになった時の彼女は、まるで自分が殴られたかのように悲痛な
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