第10話 勉強会は不毛に終わる
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俺んとこの家は、兄貴と二人暮らし。親父とお袋は県外に転勤してる。
月一で仕送りが来るんだけど、お金のやりくりは基本的に兄貴がやってるんだ。数学の最高点数十二点の俺が、お金の管理なんてやろうとしたら恐ろしいことになるだろうからな。
「ふぁ〜、ただいまー……つっても、誰もいないかー」
「お、おじゃ、お邪魔します!」
昨日のドタバタのせいか若干眠気が残っているらしく、俺はあくびをしながらのんびりと帰宅。その後を、矢村がやけに緊張した様子でついてきた。
あ、そういえば矢村を家に入れるのって初めてなんだっけ。彼女は玄関から廊下へ進み、居間に繋がる道と二階へ通じる階段を交互に見遣っていた。割と普通な一軒家のはずだが、彼女にとっては物珍しい……のだろうか?
「いいよ、固くなんなくて。今は兄貴、いないみたいだし」
「う、ううん! 人様の家なんやし、粗相のないようにせないかんけん!」
いや、だから俺しかいないんだって。この妙に頑固なところが、彼女の唯一の欠点――かな?
「……って、え? じゃあ今、家におるんは――アタシと龍太だけ?」
「そだな。まぁ、この方が静かで勉強する分にはいいだろ?」
もしかしたら、賑やかな方が良かったんだろうか? ふと気になったんで、ちょっと顔色を伺って――
「せやな! そらそうやわ! 二人っきり! の方が、集中できるやろうしっ!」
おうっ!? やけに上機嫌じゃないか。なんか「二人っきり」ってのをやけに強調してるけど……ま、本人がいいって言うんだから、いいかな。
俺は二階にある自室を指さし、そこへ向かうように彼女を誘導する。その背を追うように、俺も階段を上がっていった。
……玄関近くの壁に貼られた、「破邪の拳」と達筆で書かれている一枚の和紙。見慣れているつもりが、今でも度々違和感を覚えている「ソレ」を何となく見つめながら。
「こ、ここが龍太の、部屋なんかぁ〜!」
矢村は俺の部屋に入ると、まるで遊園地に来た子供のようにウキウキとしていた。そりゃまあ、初めて来る場所だろうけど……そんなに嬉しいのか?
「別に大したもんじゃないだろ? 殺風景だし」
「ううん、そんなことないって!」
特に何かのファンというわけでもないから、ポスターみたいな飾り物もない。漫画やラノベ、ゲームがちらほらあるくらいの狭っ苦しい部屋だ。女の子が喜びそうなものなんてないはずだけど……。
「……って、なにしてんの?」
しばらく目を離していると、今度はなにやらベッドの下に潜り込み始めていた。そんなところには何もないぞ?
「えっ? あっ、いや! 龍太はどんなんが好きなんかなぁ〜ってな!」
「は?」
「な、なんでもないっ!」
訝しげに見る俺の視線に耐え
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