第10話 勉強会は不毛に終わる
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が可哀相」って人情だけでご近所さんやお隣りさんは納得させられないだろう?
現に救芽井家がそうだしなぁ……。あそこはむしろ、人を自分達の都合で振り回してる状態だし。どうせ俺だけだからいいけど。
この文章題では、太郎は次郎と一緒に反対派の父親を説得しようとしてるけど……俺にここまでの気概はないなぁ。途中で諦めて返しちゃいそうだ。
結局、昼間の時間を全部使っての「現国集中特訓」になってしまった。頭の中の予定じゃあ、もっと数学とか英語とかにも時間を割きたかったんだけど。
日が沈みだし、辺りが暗くなろうとしている時間になってることに気がついたのは、ついさっきのことだった。
「もうこんな時間か……そろそろ切り上げるか?」
「そやな……まるで成長しとらんけど、今日のところはこれまでやな」
ぐふっ、マジかよ。これでも長時間脳みそフル回転で頑張ったつもりだったんだけどなぁ。
「できれば、英語の勉強とかもしたかったんだけどなぁ」
「……龍太、月曜日は英語で何て言うん?」
「え? んーと、『モンダイ』」
「『マンデー』や。……ホント、『モンダイ』外やな、あんた」
ムッ、そんなひどいこと言わなくなっていいじゃないか! なんだよ、その冷ややかな目はっ!
「なぁ、龍太。もしよかったらやけど……」
「ん?」
勉強道具を纏めて、帰る準備している矢村が不意に話し掛けてきた。心なしか、声が震えてるような……気がする。
「家まで、送ってもらっても、ええかな? 勉強頑張ってくれたし、息抜きに、ちょっと寄り道しながら……とか」
少しモジモジしつつ、今にも消え入りそうな声色で、そう提案してきた。まぁ、今日一日付き合わせちまったんだし、そのくらいお安い御用だよな。
「ああ、いいぜ。一緒に行こう!」
「い、一緒に……!? う、うんっ! ありがとうっ!」
感極まった顔で、彼女は深く頷いた。うーむ、そんなに喜ばしいことなのかな?
――そうか、そんなに俺が「変態」呼ばわりされてることを哀れんで……!
「グスン、いいってことよ……さあ、行こうぜ」
矢村の慈愛に、俺は再び涙した。暖かい、なんて暖かい娘なんだ! それに引き換え、俺の惨めさときたら……ううっ。
「ど、どしたん? 大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ……心配してくれて、ありがとう……!」
せめてもの恩返しとして、自分が元気を貰っていることをアピールしようと、俺は爽やかにスマイルを見せる。すると、彼女はボンッと顔を赤くして俯いてしまった。あれ、なんかマズかったかな?
何が恥ずかしいのか、赤面したまま喋らなくなってしまった彼女の手を引き、俺は玄関の前まで来た。さぁ、彼女を送ったらまた勉強だな……。
いや、もしかした
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