第2章 四国から来た方言少女
第9話 受験と訓練を秤にかけて
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き込まれてるのも、無視しがたいんだよなぁ……これが。
というわけで、俺は恐る恐る救芽井の顔色を伺うことにする。あぁ、俺って情けないなぁ……。
すると、彼女は何かに気づいている様子で、まじまじと矢村を見つめていた。なになに? 矢村の顔に何かついてんの?
しかし俺がその意味を考えようとする前に、彼女は俺の視線に気づいてフイッと顔を背けてしまった。くうぅ、やっぱりこの鬼軍曹から、許可なんて取れるわけ――
「ふん! そんなに勉強が大事なら、今日一日くらい許してあげる。彼女と好きなだけいればいいじゃない!」
――おお!? あんなに格闘術の特訓を優先させようとしてたのに、どういう風の吹き回しだ? とにかくラッキー!
「あ、ありがと」
「勘違いしないでよねっ! その娘の気持ちを汲んであげてのことなんだからねっ!」
「わ、わかってるわかってる。ホント助かるよ」
眉を吊り上げ、決して「俺の都合を気にかけてのことではない」と強調する救芽井。そんなこと言わなくても、俺のわがままなんて聞く余裕がないのはわかってますから……。
ところが、俺がその旨を態度で表すと、彼女はさらに不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。あれま、なにがいけなかったんだ?
まぁ、今はそんなこと考えたって仕方がない。救芽井家の事情を思えば、俺が自分の都合に時間を使えるチャンスは限られてるんだろうし。
今はせっかくの受験勉強の機会を、大切にさせてもらいますか!
「よし。んじゃあ、ぬいぐるみを運んだら、勉強見てくれよな」
「うん、任せとき!」
俺から了解の返事を貰った途端、矢村はパアッと明るい顔になった。おぉ、そんなに喜ばしいことなのか?
俺のことを名前で呼ぶようになったことといい、なんかいつもと様子が違う。どういうわけか、俺に優しい……ような感じがするな。
二学期が終わる前まで――いや、ここで救芽井と会った時までは、彼女ほどじゃないにしろ、かなりツンツンしてる娘だったのに。急にどうして――
――ハッ! まさか……俺が「変態」呼ばわりされてるのを哀れんで……!?
くぅぅぅッ! なんていい娘なんだ矢村ァァァッ! 俺がもしイケメンだったなら、ここで交際を申し込んでもいいくらいだ!
だけど、変態呼ばわりの誤解が解けないのは辛い……いや、それでも彼女は味方になってくれているんだ!
そうだ、俺にはまだ……帰れる場所があるんだ! こんなに嬉しいことはない……!
「ど、どしたん龍太? なに泣いとん?」
「うぐ、ひっく……ありがとう、ありがとうな、矢村ぁ……!」
心配そうに俺の泣き顔を覗き込む彼女。おおぉ……いつもならおっかない女友達でしかなかった彼女が、今は美と慈愛の女神に見えるッ……!
「――バ
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