第2章 四国から来た方言少女
第9話 受験と訓練を秤にかけて
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よりあなたには、身体で覚えなくちゃいけないことがたくさんあるのよ」
「ム、ムキー! そんな言い草ないだろう!」
商店街で迷子になった時のように、救芽井は足速に歩き出していく。俺は自分が選んだぬいぐるみを抱いたまま、なんとか追いつこうと必死に歩いていった。
そんな俺達にほったらかしにされた矢村は……。
「ちょ、ちょっと待ちぃやあぁぁ!」
やや涙目になりながら追い掛けてきた。餌を取り上げられたペットみたいだぞ、お前。
「あー……いや、あのな矢村? 俺は今ちょっと、重大なトラブルに遭遇していてな」
「トラブルってなんよ!? 一煉寺って、今まで恋愛とか全然やったやん! 何で今頃、こんな、こんな可愛い娘とおるん!?」
「違う違う、この娘とは別にそういうわけじゃなくてだな……な、なぁ救芽井?」
助けを請うように、もう一度救芽井に目を移す。また余計なこと言わないか、ちょっと心配……。
「……ふん! 決まってるでしょ。あなたみたいな変態君とお付き合いするわけないじゃない」
ぐふぅ、これはこれでキツイ……!
で、でも、これでなんとか容疑は晴れた、かな? 俺はチラリと矢村の様子を伺う。
「うーん。やけど、やっぱりなんかおかしい……。一煉寺って、アタシ以外の娘とあんま喋らんし、女子から話し掛けられたらテンパるくらいやのに。それなのに、いきなり『覗き』やなんて……。」
あああぁ! ちくしょおおお! 誤解を解きたい! 解きたいけど溶けないぃぃぃ!
「そ、そんなにあの救芽井って娘が良かったんやろか? いかん、いかんで! そやからって、一煉寺は渡せん! よ、ようし、せやったらアタシやってもっと積極的にならないかんやろな、そやろな!」
おや、何かブツブツ独り言を呟いていらっしゃる。つーか、なんかほっぺが桃色になってない? 顔も微妙にニヤけてるような……。
「い、いちれ――りゅ、龍太ッ!」
心配になって顔を覗き込もうとしたら、今度はいきなり……名前で呼ばれた? はて、今まではずっと苗字で呼ばれてたはずだけど。
「お、おう。どうしたんだ?」
「つつ、付き合っとるわけやないんやったら、一緒に勉強せんか? わからんとこ多いやろ?」
「んー、それは助かるんだけど、今の状況だとちょっとなぁ……」
急に名前で呼び始めた矢村の、突然の提案。それは、成績が常に地獄の底へ激突寸前な俺にとっては、願ってもないことだった。
一見子供っぽいところがある矢村だが、彼女はこう見えても学年上位の成績保持者なのだ。うむ、友人として鼻がデカい。いや、高い。
……だが、今の状況はなかなか辛いものがある。受験勉強が大事なのは事実だが、下手をしたら「勉強した記憶を引っこ抜かれてしまいかねない」事件に巻
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