第8話 こんなデートは絶対おかしいよ
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子は、無邪気にぬいぐるみと戯れたがる、小学生の女の子と大差ない。いつもの強張った顔とは全く違う、なんだか「自然」な感じの笑顔を見ることが出来た。
――そういえば、救芽井の笑顔なんて初めて見たな……。スッゴく可愛いし、綺麗だ。改めて、彼女がアイドル顔負けの美少女なんだって事実を思い知らされる。
「ねぇ、変態君」
嬉々とした面持ちで、救芽井が話し掛けて来る。笑顔で変態呼ばわりは、なんか今まで以上に突き刺さる……。
「な、なんだよ?」
「ぬいぐるみ、どれがいいって思う?」
「はっ?」
妙な質問に目を丸くする俺に対し、救芽井はフッと微笑んだ。なんだこの笑顔。天使か?
「今日買うぬいぐるみ。ご褒美に選ばせてあげるわ」
「なん……だと」
マズい! 俺はぬいぐるみを選別するスキルなんてカケラも持ち合わせていないというのに!
し、しかしここで失敗したら、「変態」呼ばわりの汚名返上が遠退いてしまうッ……!
「うーん、参ったな……俺、人形なんてちんぷんかんぷんだし」
「別に何でもいいわよ。あなたが可愛いって思うものを選んで」
「そ、そうか? だったら――」
直感で、行くしかない。
俺は腹を括り、一番それっぽいのを指差した。
「――この、緑のリボンのウサギ、かな」
俺が選んだぬいぐるみ。
それは、耳の辺りに大きな緑色のリボンを付けた、デカいウサギだった。二匹の同じようなウサギが、さながら兄弟のようにぴったりと寄り添っている。
「あ、ホントだ! これ可愛いっ!」
救芽井は昨日までとは想像もつかないテンションで喜び、ガラスをバンバンと叩く。おい、可愛いのはわかったから落ち着きなさい!
「でも、どうしてこれがいいの?」
彼女はようやく叩くのをやめたかと思うと、今度は真ん丸な瞳で俺を見上げて尋ねてきた。あの鋭い眼光はどこへ!?
「ん……このウサギの白がさ、なんかあんたの肌みたいで綺麗に映ったんだ。それに、リボンが緑なのも『救済の先駆者』っぽくていいだろう?」
と、俺はつい思ったままの理由を述べてしまった。
――あああ、マズい! マズいぞ! リボンはともかく、「肌」はマズい! イケメンならまだしも、ブサメン予備軍の俺がそんなこと口走ったら犯罪にしかならない! 「ド変態」からのさらなるランクアップがきちゃうううう!
「〜〜っ!」
救芽井は目をさらに丸くして、赤い顔のまま俯いてしまった。声にならない叫び声を上げて。
「あ……」
そして、なにかを言おうと口を開いた!
いやあああ! やめてえええ! 変態以上なのはわかったから、もう何も言わないでええええッ!
そして、俺が耳を塞ごうとした時――
「……ありがと」
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