第8話 こんなデートは絶対おかしいよ
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だよ……」
「なにがですか、もうッ……!」
聴覚をやられ、悶絶必至な俺達。その様子を、救芽井は拗ねた顔で見下ろしていた。
「し、信じられない! 何が彼女よ……もうッ! とにかく、さっさと行くわよ変態君ッ!」
彼女は俺の腕を引っつかみ、ズルズルと引きずっていく。俺は強制連行されつつ、既にグロッキーだったお巡りさんに別れを告げた。
それから商店街に戻ってきた救芽井は、またも同じ方向へ向かおうとしていた。彼女の目線を追っていると、やはりぬいぐるみ屋に注目しているのがわかる。
やっぱり女の子だなぁ……。
「な、なによ?」
いつの間にか、彼女の顔をまじまじと見ていたらしい。俺はそそくさと視線を正面に戻し、話題を出すことにした。
「何でも。それより、さっきの焼け跡以外にどこを『パトロール』するんだ?」
「う……!」
俺が振った質問に、彼女は言葉を詰まらせた。ははーん、さては真面目な「パトロール」は、火事現場のことくらいだったんだな。「ついで」どころか、散歩の方もかなり重要だったらしい。
「……あ。そういえば、あんたってあんまりこの辺には来たことないのか?」
「しょ、しょうがないでしょ!? 出動時以外は、専ら地下室で訓練してるだけだったんだし……」
ちょっとかわいそうな気がしたので、別の質問にしてみる。すると、今度は割とまともな答えが返ってきた。
――なるほど、あの薄暗い部屋にねぇ。道理で、お隣りさんなのに昨日まで一度も顔を会わさなかったわけだ。
にしても、この反応……よっぽど、迷子になったことを気にしてるんだな。同じ失敗をしたくないのか、微妙に俺の袖を掴んでるのがわかる。
でも、プライドに障るのかしっかりとは掴んでない。指先で、ちょいと摘んでる感じだ。
表情も、「仕方なくよ、仕方なく!」といいたげ。見ていて、正直めちゃくちゃじれったい。
「だーもう、まどろっこしいなぁ」
俺は間の抜けた声で、一瞬彼女の摘んでいる手を払い――その手をしっかりと掴んだ。
「き、きゃあっ!? なにするのよ変態君ッ!」
「――ぬいぐるみ屋!」
「……え?」
「行きたいんだろ? 一緒に見てやるから……離すな」
怒られるのは覚悟してたけど、やっぱりハッキリと言ってしまった方が気分がいい。救芽井はボッと顔を赤くして抵抗していたものの、やがてシュルシュルと大人しくなり、俺の言葉に小さく頷くようになった。
よ、よかったぁ〜……。これで「はぁ? なに勘違いしてんの?」とか言われたらトラウマもんだったわ。まぁ、それなりに確信はあったんだけどね。
その後、ガラス張りの奥に陳列された、可愛らしいウサギやクマのぬいぐるみに夢中になる彼女の姿は、かなり意外だった。
その様
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