第5話 空気は読まないスタイル
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」
倒れた彼女の頭を踏み付けている古我知さんが、挑発的に笑っているのがわかる。顔こそ見えないが、声が物凄く得意げになっていたからだ。「どや顔」ならぬ「どや声」か。
「くッ……! お父様達に怪我はさせていないでしょうね!?」
「もちろん。それに、記憶も消去していないねぇ。なにせ、まだ着鎧甲冑の全データを教えてもらってないから」
「私達は、あなたなんかに負けない……! 着鎧甲冑のテクノロジーを、兵器になんて使わせないッ!」
「わかってないねぇ、樋稟ちゃんは。この力を売り出せば、儲かるなんてものじゃない。世界の歴史に名を残すことだって出来るかもしれないんだよ? 世界中の機動隊やレスキュー隊に採用してもらって、配備してもらうだなんて味気ないとは思わないのかい?」
古我知さんはグリグリと救芽井の頭を踏みにじりながら、なにやら難しいことを詰問している。おぉ……まるで意味がわからんぞ。
「ううっ――名を残す、なんて夢想家もいいところです! 兵器の歴史に残る名前なんて、私はイヤッ! お父様も、お母様も、おじいちゃんも、人を救うためにコレを造ったんだからッ!」
悲痛な叫び声を上げる救芽井。く、なんだか放っておけない事態になってきてない? 俺の良心という名の緊急警報が作動中なんですけど……。
「家族思いだねぇ……感動しちゃったよ、僕。じゃあ、せめて家族全員の記憶を均等に消してあげるよ。君だけがかすかに覚えていて、周りが君を忘れてる、なんて嫌だろう?」
「イ、イヤァァァッ! そんなの、そんなのダメェェッ……!」
記憶を消す、という脅し文句が効いたのか、救芽井はかなり怯えている様子だった。「家族全員」てのが痛いんだろうな……きっと。
それにしても「記憶を消す」……ねぇ。こんな状況じゃなきゃ、冗談だと笑い飛ばせるんだけど……。
「大丈夫大丈夫。全てが終わった頃には、僕は世界的な兵器開発者として歴史に名を残し、君達一家は『盗作』を企てた連中として刑務所の牢屋行きさ」
諭すような口調で話す古我知さんは、戦意を喪失したのかグッタリしている救芽井の頭を掴み上げ、彼女の顔を覗き込む。
「――じゃあ、行こうか。僕の、着鎧甲冑の成功のために」
そして、その一言と共に彼は救芽井を抱えてその場から立ち去――
「あー、ちょっとちょっと!」
――るってところで、やってしまいましたよ。俺。
明らかに場違いな空気で、俺は道を尋ねるかのようなノリで古我知さんに話し掛けていた。向こうは二人とも俺を前にして固まっている。
たった今、ゴロマルさんを言い付けを思い出した俺も俺だけどさ……そんなにビックリしなくたっていいじゃないか。だってほら、ちょっと出遅れたらあのままゲームオーバーになってたような
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