キーマン
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
(落ち着け、まだ焦る必要はない)
次はスライダーがスッポ抜けてボール。その後ストレートで追い込んだが疲れが溜まっているせいで制御ができず、フルカウントにもつれ込んでいた。
(にこのおかげでかなり疲労してる。ここは・・・)
((エンドラン))
点差が付いているだけに何か仕掛けなければ瞬く間にやられてしまう。そう考えた剛はストライクだけを打つエンドランを指示した。
フルカウントからの6球目、ツバサが足を動かしたと同時ににこが走り出す。
(走った!?)
(エンドランか!?)
にこの姿が見えて焦ったのか真ん中に入ってきたボール。ラッキーガール希はこれを打ち返―――
バシィッ
―――すことができなかった。
「に“ご!?」
「あ!!あかん!!」
ど真ん中のボールを空振りしてしまった希とそれを見たにこは驚いた。とにかく盗塁を決めなければと滑り込むにこ。しかし、英玲奈からのスローイングは逸れることなく、ベースで待ち構えるショートのグローブに吸い込まれ、にこの足を弾いた。
「さ・・・三振ゲッツー・・・?」
立ち上がって戦況を見定めていた剛は、まるで糸が切れた操り人形のようにベンチに腰掛けた。その姿はさながら、燃え尽きたボクサーのように動けなくなっていた。
「2アウト!!外野!!前に来い!!」
この日最速タイの137kmのストレート。これにはいくら器用な希でも当てることはできなかった。希ならいけるとエンドランを敢行した剛は、取り返しの付かない失態に脱け殻になっていた。
(いや、まだだ!!)
このまま試合が終わるまで立ち上がれないかと思われたが、剛は懸命に立ち上がり平静を装う。しかし、打席に立つ少女を見て、その顔から笑顔がなくなる。
「すまん・・・海未・・・」
肩をケガしてバッティングも満足にできなくなっている海未。そんな彼女が打席に入るやすぐさま外野手が前に詰めてくる。
(ポテンヒットすら与えるつもりはないってか)
今の海未の状態ではとてもじゃないが外野の頭を越えることなど不可能。ならばセーフティかと思ったが、内野も前に来ているためそれもできない。
(残る希望は四死球だけだが・・・)
けたたましい音をあげてミットに収まる白球を見て、そんな希望も掠れてきた。海未ににこのようにカットすることはできない。ツバサに四球を投げさせる方法などこれっぽっちもないのだ。
(剛さん・・・なぜ何も謝ったんですか?)
押し黙り、何も仕掛けられないからダミーサインを送ることしかできない指揮官を見て、海未は奥歯を噛み締める。
(私が怪我をしていなければ・・・この試合もここまでもつれなかったかもしれません・・・私がうまく避けてれば、凛に無理させる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ