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レーヴァティン
第三十五話 北の大地その六

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「そうしてしまってはです」
「身体が満足に動かなくなるでござる」
「酔拳という訳にはいきません」
 順一の今の言葉は真面目なものだった。
「剣も術も使うにしてもです」
「鈍るでござる」
「そうなりますので」
 だからだというのだ。
「お酒もです」
「飲み過ぎは厳禁でござるな」
「そうなります、多少です」
 その飲む量はあくまでというのだ。
「そうしていきましょう」
「だよな、酒もな」 
 久志は今は飲んでいないがそれでも飲んでいる順一を飲んでそのうえで話した。
「飲まないとな」
「こうした場所では」
「凍えるな」
「少しずつ飲みながらです」
「身体を暖かくしてな」
「そしてですね」
「何時でも満足に戦える様にしないとな」
 こうした話もしつつだ、一行は雪原を進んでいった。そして夕方近くになった時にだった。一行の前に狼の一団が表れたが。 
 彼等は一行を一瞥すると去った、久志はその彼等を見てこんなことを言った。
「この島で狼と戦ったことないな」
「一度もだね」
「ああ、この世界の時間で結構いるのにな」
 それでもというのだ。
「まだ一度もな」
「おいらもだよ、むしろね」
 淳二はその久志に笑って話した。
「狼と戦闘になる方が珍しいよ」
「そうだよな、狼とは」
「だって犬だから」
 淳二は笑ってこうも言った。
「だからね」
「そうだよな、狼は」
「狼から犬になったんだよ」
 狼を家畜化したものが犬である、だから犬の種類によっては狼にそのシルエットが酷似している種類もいるのだ。
「だからね」
「元々人に懐くか」
「そうした習性もあるから」
「人を襲うことはか」
「滅多にないよ」
 そうだというのだ。
「狼はね」
「だからさっきもだな」
「そんなに餓えてなかったみたいだから」
「襲って来なかったか」
「野生の生きものはね」
 家畜ではない彼等はというと。
「餓えていないとね」
「襲い掛かって来ないな」
「そうそう、ましておいら達は六人いて皆武器持ってて」
「しかも強いからか」
「まずね」
 相当に餓えていて何が何でもという状況でもない限りはというのだ。
「襲い掛かって来ないよ」
「そういうものか」
「狼は特にね」
「熊とは戦ったことがあるけれどな」
「確か食べて干し肉にもした熊だね」
「あの熊はまた別か」
「その時冬じゃなかった?」
「いや、春だったな」
 その時のことを思い出しつつだ、久志は淳二に答えた。
「あの時は」
「多分春先だったと思うけれど」
「そうだった」
「じゃあその熊ばかでかかったね」
「何でそこまでわかった」
「いや、その熊冬眠し損ねたんだよ」
 そうした熊だったとだ、淳二は久志に話した。
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