第百三十六話 鍛錬をしてその六
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「どうにも」
「私もだ、進歩した文明の中にいたい」
「これからもですね」
「そうでありたい」
留美さんも同じ考えだった、円香さんと。そして僕もだ。
「やはりな」
「そうですよね、やっぱり」
「文明はだ」
「人にとって必要ですね」
「自然に帰れというならだ」
ルソーの様に。
「それもいいだろう、しかしだ」
「文明にいたいならですね」
「文明を理解してだ」
そのうえでというのだ。
「その中で生きていくべきでだ」
「自分を高みに置いてそうしたことを言うことは」
「偽善、いや悪徳だ」
それになるとだ、留美さんは言った。
「あってはならない」
「そうしたものですか」
「私が思うにな」
「そうなのですね」
「うむ、どうも話が難しいか」
ふとだ、留美さんは少し自嘲めいた笑みを浮かべて円香さんに対してこんなことも言った。
「自分でもよくわからない」
「いえ、よくわかります」
「そうなのか」
「留美さんが言われんとされていることが」
「ならいいが」
「ですが留美さんは」
「よくわからないがある程度はな」
「おわかりにですか」
「なっている」
そうだというのだ。
「ある程度だが」
「そうですか」
「うむ、それでだが」
留美さんは円香さんにさらに話した。
「我だの文明だの話したが」
「はい、今日は」
「妖怪や幽霊も交えてな」
「そうなりましたね」
「そうだな、何かスケールが大きいな」
「文明になりますと」
「柄にもないか」
留美今度は自嘲めいた笑みを浮かべた。
「私らしくない」
「こうしたお話をされることが」
「そう思ったがな」
「別に違うのでは」
「そうではないか」
「はい、誰でもこうしたことを思うかと」
我や文明といった難しいと言われることをというのだ。
「哲学や社会については」
「だから私もか」
「はい、ですから」
「自分では思想家でないと思っている」
「では何だと」
「家は寺だがな」
京都のだ、だから口調には京都の訛りが入っている。
「しかし宗教家ともだ」
「思われていませんか」
「どうもな」
「そこまで難しく考えなくてもです」
円香さんは奈良の神社の娘さんだ、何でも大和高田市の山の近くにあってかなり古い神社らしい。
「普通に考えるかと」
「こうしたことはか」
「はい、ですから」
「柄にもないと考えることはか」
「そうでもないかと」
「そうか」
「はい、そうかと」
留美さんに穏やかな声で話していた。
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