ターン85 鉄砲水と変幻の銀河
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「……どう、三沢?」
眩しいほどに明かりの灯る部屋の中、ひたすら机に向かう三沢に声をかける。少し待ってみたが反応がないあたり、こちらの声も届かないほど集中しているのだろう。
三沢がこの世界に突然帰ってきて、そうかと思えば入れ替わるようにオブライエンからの連絡を受けて童実野町へと駈けつけていった十代からは、いまだに何の連絡もない。返り討ち……なんてことは、十代に限ってあり得ないだろう。あれだけ大口叩いておいてあっさり負けた僕や、まだ異世界でのトラウマがぬぐい切れていない皆に配慮してか本人は隠しているつもりらしいけど、今の十代にはあのユベルが付いている。最初に彼……彼女?の姿をこっちの世界でまた見た時にはさすがにびっくりしたけれど、十代がそれでいいならきっとあの後で何かがあったんだろう。それに、下手に野生のSALでも拾ってこられるより食費も世話の手間もかからないから楽なもんだ。
「よし。清明、できたぞ。ちょっと動かしてみてくれ」
いきなり椅子に座ったまま振り返った三沢が、僕に向かって青い輪っかを投げてよこしてきた。三沢の解説をBGM代わりに聞きながら、ようやく返してもらえたそれを元通り腕にはめ直す。
「これまでは覇王に対抗するために突貫工事で作った間に合わせの品だったからかなり無駄も多かったが……これで、エネルギー効率はだいぶマシになったはずだ。給水機能もそっくり取り替えたから、半永久的とまではいかないがそうそうエネルギー不足になることはないだろう」
ミスターTを撃退したのち、三沢がまず取り組んだのは意外にもアカデミア生徒たちに危機を伝えることではなく、以前僕が貰った三沢謹製水妖式デュエルディスクの手直しだった。確かにやってくれるならそれに越したことはないけれど、それはちょっと悠長すぎやしませんかね。
そう聞いた僕に、なんてことはないといった風に軽く笑いながらこう返したのだ。
「そうは言うが、今この話を下手に広めてどうする?確かになまじ俺たちの代にはこれまでの不思議な経験があるから、この話も今更信じない奴はいないだろう。そしてそこから生まれる恐怖はパニックを生み、それはダークネスにとって格好の餌になる。なに、大丈夫だ。俺の計算によれば、奴らが次にこの世界に現れるまでまだ少しは時間がある。勝負に出るのはもう少し情報を絞り、戦う準備ができてからでいい」
確かに、その光景は容易に目に浮かぶ。何から何まで正論尽くしの三沢の言葉に渋々黙る僕の顔を見て、何がおかしいのかより一層笑みを大きくする。
「計算は俺がやっておくから、お前はもう少し今の時間を楽しんで来い。卒業デュエルのシーズンなんだろう?せっかくのイベントを邪魔する権利なんて、ダークネスだろうとありはしないさ。十代だって、何かあったらその時点で連絡してく
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