暁 〜小説投稿サイト〜
星雲特警ヘイデリオン
番外編 帝王は暁を仰ぐ
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。暗にそう告げられ、地に伏した帝王は乾いた笑いを漏らす。そんな彼を、どこか哀れむように見下ろした後――「暁」の男は踵を返し、バーニアを噴かし始めた。

「……行くのだろう。その前に、貴様の名を知りたい」
「貴様に名乗る名前などない」

 敵対者であるには違いない。だが、この男がいなければ自分は、さらに大多数の魔族と戦わなければならなかった。
 その事実から、目を背けるように。「暁」の男は、魔王との決戦に向かうべく――帝王を残して飛び去って行く。

「……ただ。この鎧は、『暁』と……そう呼ばれている。闇を切り裂く、太陽の輝きとして……な」

 最後の置き土産に、相棒の名を告げて。

 それだけを言い残した彼は、瞬く間に帝王の前から姿を消してしまった。その影を見送る来訪者は、自分を初めて下した強者の名を、その胸に刻み込む。

「……アカツキ、か」

 ――それから、間も無く。この星から姿を消した帝王は、戦いの結末を見届けることもなく母星へと帰還した。
 圧倒的な力と覇気を以て、自分を打ち倒したあの強者が――魔王と刺し違え、果てたことで。帝王を惹きつけた闘争の波動が、途絶えたのである。
 それにより地球への関心を失った帝王は、その星の名すらも忘れ去り――さらなる闘争を求めて、死と殺戮の海原へと漕ぎ出して行った。

 そして「暁」の男が消えた以上、シルディアス星人の存在を当時の人類が知ることはなく――人々がその力を思い知るのは、65年も先のことになるのであった。

 ◇

 ――人類の希望として、最期まで戦い抜いた「暁」の男。彼の死後、人類は「ゲオルギウス」を生み出した「W機関」の叡智を封印。シルディアス星人さえ穿つ最強の科学力を、自ら葬った。
 それは……自分達の手で、自然を穢し地球を汚染してきた彼らが。最後に見せた、良心だったのかも知れない。

 戦後、「ゲオルギウス」を欠いた人類は復興と並行して、新たな地球防衛組織を編成。聖騎士達が命を賭して紡いだ未来を、守り抜くための戦いに漕ぎ出していく。

 その果てに待つ激動の時代を乗り越え、平和な世界を掴み取るために。――「暁」の男が愛した、この世界を守るために。

 ◇

 ――今から約1年前。シルディアス星の王宮前では、星雲特警とシルディアス星人の最終決戦が始まっていた。
 全身装甲の兵士達と、鋭利な爪を振るう魔獣達が、血で血を洗う死闘を繰り返す。その地獄絵図を玉座から見下ろし、帝王は過去を思い返していた。

 69年前のあの日も、このような死地の中での戦いであった――と。

「……来たか、アカツキ」

 そして、数百年に渡る歴史において。初めてこの「帝王の間」に踏み込んだ、侵入者を前にして――帝王は黒の仮面に笑みを隠し、赤い煌めきを放
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