番外編 帝王は暁を仰ぐ
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絶えるまで闘いを続ける。
そんな彼らには、星の外から戦いの波動を感知する習性があった。魔王と人類による永い戦争が、波動となって宇宙に轟き……血に飢えた「帝王」を呼び寄せてしまったのだ。
この当時、人類はまだシルディアス星人という侵略者の存在は知らない。だが「暁」の男はすでに、この帝王が魔王と同じ人類の脅威であることを悟っていた。上位種の近衛兵を単騎で一蹴する戦闘力など、尋常ではない。
彼は手にした戟を握り締め、一撃必殺の構えに入る。――後に魔王との決戦が控えている以上、長期戦は避けねばならない。
「……貴様の欲求に付き合っている暇はない。邪魔立てするなら、容赦はせん」
「案ずるな、時間は取らせん。お望み通り、一瞬で終わる」
その意を汲んだ上で、己の欲望を満たすため。帝王も腰に手を伸ばし、一振りの剣を引き抜いた。
――真紅に発光する光刃剣。それは、彼が今まで縊り殺してきた星雲特警から奪った代物である。
闘争を望む暴力の化身。そう形容して差し支えない帝王の容貌に反して、その手に握られた赤い光刃剣は、鮮やかな輝きを放っていた。
その光を目にした「暁」の男は、彼の剣が「自前」ではないことを察して、仮面の下で目を細める。これまで一体、どれほどの命を奪ってきたのか――と、敵愾心を露わにして。
「……行くぞ」
「……あぁ」
魔王だろうと、帝王だろうと。人類に仇なす敵であるなら、排除する。自分達はそのために、人間としての己を捨てたのだから。
――「暁」の男は、その一心と突き出した戟に、己の魂を委ねる。命を力に変え、ただ真っ直ぐに刃を突き込むために。
それに応じるかの如く、帝王も赤い光刃剣を振り上げる。生への渇望。充足を得る為の戦い。その欲望を、満たすために。
戟が、光刃が。閃き、激突し。唸りを上げて、互いの血を望む。
――その結末は。互いが望んだ通り、一瞬のことであった。
◇
魔族の骸が散らばり、山となり、地に転がる死の大地。かつては東京と呼ばれていた、その地の中で――ただ1人の男が、得物を手に立ち尽くしていた。
その男は、鋼鉄の手に握り締めた戟を振るい――戦いの終わりを、言外に告げる。彼の足元では、異星の来訪者が倒れ伏していた。
「人間の意志」を燃料とし、「心の強さ」を以て刃を振るう「ゲオルギウス」の前には、本能のままに戦うだけのシルディアス星人など敵ではない。
この結末が、その事実を雄弁に語っている。
「……殺す暇も惜しいか? この俺を、倒しておいて」
「貴様の首の値打ちなど知らん。確かなのは、魔王を討たねば我々の戦いは終わらない……ということだけだ」
「そうか。……そう、か」
貴様など殺す価値もない。貴様などと遊んでいる暇はない
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