第三章
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「足音したわよね」
「ええ、確かにね」
「けれど誰もいないわね」
「どういうことかしら」
それが何故かわかりかねた、それでだった。
二人はその日家に帰ってからもこのことは何故かと考え翌日学校に行っても修の家でアルバイトをしても考えた。それでだった。
作業をしつつだ、まずは結月が言った。
「姉さん、昨日の夜の足音はね」
「ええ、あれね」
「何だったのかしらね」
「振り向いたらいないからね」
それでとだ、奈津美も応えた。
「訳がわからないわよね」
「本当にね」
「振り向いたら誰もいないって?」
そう聞いてだ、修は二人に言った。
「それ妖怪じゃないかな」
「妖怪って?」
「大阪の街中に出るんですか」
二人は妖怪の存在は否定しないがこんな人の多い都会で出る筈がないと思っていた。人がいない場所に出ると思っているのだ。
「それはないかと」
「幾ら何でも」
「出るよ、人がいる場所に出るんだよ」
それが妖怪だとだ、修は姪達に話した。
「それでその妖怪はべとべとさんだね」
「べとべとさん?何か可愛い名前ね」
「そうね」
二人は修の話を聞いてこう言った。
「何かね」
「花子さんみたいな感じね」
「まあ何かする妖怪じゃないから」
襲ったり食べたり、というのだ。
「姿も見せないし」
「それでも何かって思ったわ」
「痴漢かと思います」
「うん、そうして人を驚かせるだけの妖怪だよ」
修はそのべとべとさんについてこう説明した。
「別に何もないから」
「だから痴漢と思うから」
「夜道に後ろから来られますと」
「それが嫌なの」
「私達にしましては」
「うん、じゃあね」
それならとだ、修は二人にさらに話した。
「また出て来たらべとべとさん先にお越しって言えばいいから」
「それだけ?」
「それだけで済むんですか」
「うん、それだけだよ」
こう話すのだった。
「本当にね」
「何ていうかね」
「信じられないんですけれど」
二人は叔父の言葉に少し呆然となって返した。
「それだけで妖怪がいなくなるとか」
「お塩位必要なんじゃないの?」
魔除けのそれがというのだ。
「あと御守りとか」
「それ位は」
「いや、そう本に書いてるんだよ」
修は自分の言葉にまさかと言う姪達に述べた。
「妖怪のね」
「じゃあ実際になの」
「そう言ったらですか」
「べとべとさんが後ろからついてこなくなる」
「本当にそうなんですね」
「若し痴漢だったらこれ使ってね」
二人にスタンガンを二つ差し出しもした修だった。
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