第四十四話 白の国へ
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子殿下には、何やら秘策が御有りのようですが」
「艦長、知ってのとおり僕がアルビオンに来た理由は、表向きは新婚旅行だが、本当の理由はアルビオンに対し釘を刺すことだ。この様な真似を二度としないように、ね」
そう言ってマクシミリアンはマストの天辺に付いている旗を見た。
「風が変わったようだ。ベルギカ号からは向かい風だな」
呟くように言い、そして……
「艦長! ここは一つ、アルビオン艦隊の度肝を抜いてやるとしよう。風に逆らい全速力でアルビオン艦隊のど真ん中を突っ切る。出来るな?」
「もちろんにございます。あの連中の驚く顔が目に浮かびます。機関室に連絡、最大戦速だ!」
ド・ローテルは不敵に笑い、下士官に命令を出した。
☆ ☆ ☆
アルビオン王立空軍に所属する64門戦列艦アガメムノン号の副長ヘンリ・ボーウッドは不審な報告を受けた。トリステインのフネから大量の黒煙が出たと報告が上がったのだ。
「火事を起こしたのか?」
「現在調査中ですが、そうとしか見えませんでした」
「分かった。下がってよい」
報告を持ってきた水夫は、敬礼をして去っていった。
「艦長に報告しないと」
ボーウッドは、最近トリステインから輸入されるようになった紙に報告内容を書き写し艦長室へと向かうべく甲板に上がった。
「これは艦長。甲板に出ておりましたか」
艦長室へ向かう途中、アガメムノン艦長のネルトンは甲板から身を乗り出し黒煙を上げて進むベルギカ号を見ていた。
「ボーウッド、あれを見ろ」
ボーウッドの方を見ずにベルギカ号を指差した。
「トリステインのフネですね。黒煙が上がっていると報告に上がろうと艦長室に向かう途中でした」
「手間が省けたな。それよりも……」
ネルトン艦長は、ようやくボーウッドの方を顔を向けた。
「あのフネ、風に逆らって進んでいる」
「えっ!?」
ボーウッドは思わず声を上げた。
ネルトンの言うとおり、ベルギカ号は向かい風の中、アルビオン艦隊に向け進み続けていた。しかもかなり速い。
「本当だ、一体どうやって……」
「風魔法で進んでいる訳でもなさそうだ」
風に逆らって進むベルギカ号に、アガメムノン号を始めアルビオン艦隊の各艦艇からも驚きの声が上がっていた。
『何がどうなっているのだ!?』
『魔法だろうよ。そうでないと説明がつかない』
『マストを見てみろ帆が張ってないぞ』
『それじゃ、どうやって進んでいるんだ?』
アルビオン艦隊のど真ん中を、黒煙を上げて進むベル
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