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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
人狩りの夜 2
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魔術で生成した毒は麻痺毒。テトロドトキシンに酷似したそれは対象の神経伝達を遮断して麻痺させる。そのため脳からの呼吸に関する指令が遮られて呼吸器系の障害が生じる。
 口や舌などはまっさきに痺れて言語障害を起こし、呪文の詠唱など不可能にさせ、【ブラッド・クリアランス】による解毒を不可能にする、魔術師にとって致命的な猛毒だった。

「雀の涙程度の量で熊も動けなくさせる強力な毒で、肺や心臓といった生命維持にかかわる器官まで麻痺させるにもかかわらず、死に至らしめることはなく仮死状態を維持できる……。魔術毒ってのは実に便利だ。――お〜い、聞こえただろ。みんな降りてきてくれ」

 秋芳の声に応じて地上から十数人の人達が降りてきた。みな、粗末な身なりをしていて、手に手に剣や銃を携えていた。
 甘い言葉でだまされ、人狩りの獲物として連れてこられた外国人労働者や貧民街の子ども達だ。
 騒ぎを起こして人狩りを中止に追い込むため森からまっすぐに館を目指した秋芳とペルルノワールだったが、人狩りの主催の場はまさに館の周囲だった。
 贅を尽くした館の周りで残酷な遊戯がおこなわれていたのだ。
 トラバサミなどの罠だらけの広場を追い立てられたり、池に沈められて窒息寸前に引き上げられてはまた沈められることをくり返されたり、召喚した魔獣をけしかけられたりといった、様々な虐待を受けていた人々を救出し、加虐者と衛兵らを処理してまわっていると、地下へと通じるあやしい建物を発見し、こうして醜悪な貴族を黙らせた次第だ。

「にいちゃん!」
「エリック!」

 捕らわれていた兄弟が無事に再会する。

「よかった、みんな無事だ」
「どうやら子どもらは全員助かったようだな」
「だけど、オーマスやオズウィンは……」
「ちくしょう! クソったれの貴族どもめ!」

 すべての人を助けられたわけではない。
 森で殺されたボルカン人(オズウィンという名だった)をはじめ、手遅れだった人もいた。

「連れてこられたのはこれですべてか?」
「うん、アルフもロミオもマギーもダンテも……みんないる!」
「ああ、おれたちの仲間はこれで全員だ。……生きているやつは全員そろった」
「これからわたし達は館に向かいます。敷地内の衛兵はあらかた片づけたから、門の近くにあった馬車で逃げるのよ」
「もしもの時はそのブタガエルを――ええと、ライスフェルト・ズンプフ侯爵だっけ? そいつを人質にでもするといい。そのメスが刺さっている限り仮死状態を維持できるが、抜けば目を覚ます。起こすときは魔術を使われないよう用心しろ」
「ああ、わかった。おれたちも借りを返しに行きたいところだが、魔術を使う貴族どもにはかなわねぇ」
「ありがとう、ペルルノワール!」
「あんたのおかげで命拾いしたよ」
「オルラ
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