人狩りの夜 2
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なことにやつらは狐狩りの狐じゃ。生きたまま解剖したかったのう。だが安心せい、おまえの弟どももわしが切り刻んでやる。だから自分が死んだ後にどうなるかなどと、よけいな心配はしなくていいぞ。内臓はホルマリン漬けにして、骨や皮は剥製にして仲良くならんで置いてやるからな。ドゥフッドゥフッ」
「ンーッッッ!!」
この老人としては気の利いたユーモアのつもりなのだろう、人間性のもっとも醜悪な部分を垂れ流して、べちゃべちゃと舌を鳴らして笑った。
「――お楽しみのところ失礼します、ドクター」
地下室に降りてきたクェイド邸の使い番が声をかける。
「なんじゃ、邪魔するでない!」
「それが、トラブルが生じまして――」
「なんじゃとぉ、侵入者!?」
突如として館に乱入してきた正体不明の侵入者があちこちで狼藉を振るい、ケガ人が続出している。そのため今夜の遊戯に出席している人達に安全のため避難を呼びかけている。
そのように、使い番はペストマスクのドクターに状況を知らせた。
「いちど『鳳凰の間』にお集りください。安全が確保しだいお遊びの続きを」
「ふんっ、賊の侵入をゆるすとは、侯爵殿も存外抜けておるな。いらんいらん、避難なぞ必要ない。自分の身は自分で守ると、そう伝えろ」
「かしこまりました」
使い番はあっさりと引き下がった。今宵のゲームの参加者達は館の主に比類する権力や財力を持つ実力者なのだ。彼らの意向をないがしろにすることはできない。
「まったく邪魔しよってからに……なんじゃ、その目は」
拘束された少年が怒りに満ちた視線をむけている。先ほど彼の弟のことに言及したことが、少年の反抗心に火を点けたのだ。
怒りの感情は、いかなる恐怖にも上回る。
「反抗的な目つきをしおって、気にくわん。実に気にくわん」
ドクターの手が愛用のメスにのびる。
「しょせんは貧民窟のクソガキ。老人に対する敬意を持たんとは、ろくな教育も受けていない浮浪児の証左よ」
ドクターの手にしたメスが光る。
「わしは今まで七、八〇人ばかりの人間を生きたまま解剖した。そのうちのひとりがおまえのような目をしてわしを極悪人だの鬼畜だのとののしりおった。そのような無礼者には罰をあたえてやったぞ。そやつの目の前で、そやつのガキを麻酔なしで解剖してやったのじゃ。ドゥフッドゥフッ」
うれしそうにドクターがメスを振るう。
「わしは医学とアルザーノ帝国の発展のために非国民や劣等民族の肉体を切り刻んできたのじゃ。医学の進歩に役立てることに感謝せい。おまえの目の前で弟どもを切り刻んでやろうか!」
「自分のたるんだぜい肉でも切り刻んでろ」
「!?」
秋芳の手がひるがえり、脂肪の塊を無造作に放り投げた。
「うぎゃ
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