Side Story
アンサンブルを始めよう
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「一つ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「なんだよ」
陽光が射し込む窓際に横付けされたベッドの上。
両腕を組んで私の腹部に跨り直したロザリアが、赤く染まった頬を不機嫌そうに膨らませる。窄めた桃色の唇が非常に愛らしい。
思わずぎゅっと抱き締めて頭を撫でてしまいたくなるが、私の両腕は布団を挿んでロザリアの両膝に踏み潰されている。成長した小悪魔に抜かりは無いようだと微笑ましくなる一方、そんなところで感心してる場合じゃないでしょうと自分自身に突っ込まずにはいられない。
「此処で何をしているのですか、ロザリア」
彼女との旅には、幾つかの守るべき約束と避けられない制限がある。
例えば「二人分の生活費用は全額私の手持ちで賄う」とか「一日三食・きっちり同じ時間に私が用意する」とかは「守るべき約束」で、不測の事態等々に見舞われて達成できない際には、事前か事後のデコピン一発で赦される。
しかし、「私ができる限り人里に足跡を残さなければいけない」半面「ロザリアは極力人目に付かない場所でしか行動できない」等、女神アリアと人間との関わりを最小限に抑える意味で課された「避けられない制限」は、許す赦さないの個人的な話で収まる問題ではない。下手をすれば全世界を巻き込むロザリア(アリア)争奪戦が始まってしまう。
だからロザリアは普段、自身が作った結界の中に調理器具や寝具といった生活必需品を持ち込み、其処で寝起きしている。こんな風に人里内部で姿を見せたり、間違っても私と同じ宿・同じ部屋・同じベッドで寄り添ったり眠ったり着替えたりはしなかった。
是非、想像してもらいたい。
先日の夜、一人で泊まった宿の一室。一人で目覚める筈の朝。息苦しさで目蓋を開いた瞬間、己の顔の両横に手を突いて真上から覗き込んでいる愛しい存在とバッチリ視線が重なった驚きを。
いったい、何の試練なのか。
「腹へった」
「はい?」
「待ち合わせの時間、とっくに過ぎてんだよ! いつまで寝てるつもりだ!? 変態キング神父改め、寝坊助無職大王クロスツェルって呼ぶぞ!」
無職で大王とは、此は如何に。しかも語呂がちょっと悪くなった。
「昼になる前にさっさと起きろ! そして飯を作れ! ……軽めの物で良いからなっ」
私の胸を布団越しにポスポス叩いた後、鼻先に人差し指をビシッと突き付け、返事も待たずに消えてしまった。
「……はぁ」
驚きやら戸惑いやらで乱れた心拍を整え、軽くなった布団を捲って上半身を起こす。
窓の向こうは青い空。石造りの街中は、行き交う人々の話し声や馬車が駆ける音等でとても賑やかだ。加えて、夜明けを告げる鳥の気配が殆ど無い。朝には違いないが、どちらかと言えば昼に近い頃合いか。こんな時間まで寝入るなんて初めてだ。
要するに
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