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逆さの砂時計
Side Story
アンサンブルを始めよう
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植物は循環の輪を踏み出してないから脅威にはならんよな。そもそもこんだけデカく成長してんだし、世界樹はとっくに回復済みだろう。つまり、だ」
 一旦目を閉じたロザリアが息を大きく吸い込んで、リーシェの顔を覗き込み

 「お前らが此処に居続けても、やる事が無い!」
 
 きっぱりはっきり、断言した。
 「…………やることが……ない……」
 涙も止めて茫然と呟くリーシェに、ロザリアは真剣な顔でこくりと頷く。
 「私はな。ごく一部とはいえ、人間世界を歩き回って知ったんだ。お前達みたいに、他者を認めず理解しようともせず交わらず、一定の場所から動こうともしない存在を、何と呼ぶのか」
 「……引き籠り、ではなく……?」
 「ああ。勿論それもあるが、厳密には少し違う。お前らは」
 「我らは……?」
 薄い緑色の目力に気圧されてか、リーシェの喉が浅く上下する。
 そして

 「『昼行燈』だ」

 「うわああああーーーーーーーーん!!」

 「(あ。意味、知ってたんだ)」

 昼行燈(ひるあんどん)。明るい場所とか時間帯に灯りを点けてどうする。燃料の無駄遣いは勿体無いからお止めなさいの意。転じて、生産性の欠片も見えない無意味なコトばかりしたがる人や、誰にも何にも、自分自身にすら貢献しようとしない、ただ其処に在るだけの、全面的に役立たずな人を揶揄う言葉。
 ちなみに、行燈とは東大陸の一部の国で使われている照明器具で、素材や形状や囲いの有無に違いはあるが、他大陸でのランプや燭台とほぼ同じ役割の品だ。

 「我らは! 我らは役立たずなどではぁあーっ!」
 「そうか? 私の目には、母さんの結界の中でのんびり畑を耕しつつ、警戒と称して散歩してるだけの暇人に見えたけどな。他に何かやってたか?」
 「せ、世界樹に、害意有る者を近付けぬように迷わせたり!」
 「うん。ちょっとした悪戯気分の散歩だな」
 「彷徨える魂を世界樹の元へ誘導したり……!」
 「世界樹の循環は世界中に及んでるんだろ? ってことは、お前らが居なくても勝手に集まる仕組みじゃないのか、それ。精々到着までの時間を里幅分短縮する程度?」
 「ぐ……! あぅううー……っ」
 返す言葉が見付からないのか、悔し気に唇をパクパク動かすリーシェ。
 「他には? 何をしてた? それらはお前が……お前が将来産み育てる子供達が、あんな目に遭わされてでも継続しなきゃいけない事か? お前は、本当に、納得できるのか?」
 「っ!」
 追い討ちをかける問いに小さな体がガタガタと震え出し、戻りかけていた生気が鳴りを潜めてしまった。
 (…………。)
 リーシェの恐怖は、ロザリアの経験と記憶から来るもの。ならば今のリーシェは、べゼドラに監禁されたばかりの頃のロザリアそのものだ。
 あの激
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