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逆さの砂時計
Side Story
アンサンブルを始めよう
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った。でも、長は「敢えて」そうさせなかった。私を護っていた女神を、私達の手が届かない遠くへ行かせない為に。
 ロザリアが怒っている理由がこれなら、切っ掛けは私の寝坊か。彼女は「死」に対して極端に臆病だから。残された時間の少なさを実感して、いろいろと我慢の限界を超えてしまったのだろう。
 (うーん……)
 正直血液なんか飲みたくないし、私が人間を超える生命力と自己防衛手段を得ていたら、それこそ彼女達はレゾネクトを遠ざける為に糸口すら残すまいと、私達への守護や繋がりを総て断ち切ってたんじゃないかって気がする。
 であれば、私は長の決定に感謝こそすれ怒ったり恨んだりはしない。寧ろ、よく其処まで考えてくれたなぁと薄ら感動したのだが……ロザリアが私の事で怒ってくれるのが嬉しいから黙っていよう。
 リーシェの件でも考えがあるらしい彼女の邪魔はするまいと静かに立ち上がり、ふわふわ漂う球体と三人からこっそり距離を空ける。
 「人間一人の消耗を早めさせた程度の些事で我らに報復などと……先も読めぬ、下賤な小娘が!」
 長の目がギラリと光った。時間干渉を狙ってるなぁと察しても、無力な私にはどうしようもない。両腕を腰上に回し、成り行きを見守る。
 「下賤で結構! お前らに高貴だ何だと敬われても、私は全然嬉しくない!」
 ロザリアの瞳も光った。私に感知できてないだけで、何らかの攻防が始まっているようだ。三人共、全然動かないけど。
 「第一! この期に及んでもまだリーシェに一言も謝らない、説明さえ一切しない自分勝手なお前ら如きに、何が護れるってんだよ! バカバカしい! 世界樹がどーのこーの言う前に、その歪み切った世間知らずな使命感と正義感を世界の果てで見直してこい!! 母さんの力に頼ってるだけの引き籠りがッッ!!」
 「っ!?」
 長の足元で薄い緑色の閃光が弾け飛び、何百もの細い槍となって彼の体を刺し貫く。思い掛けない方向からの攻撃? でよろけた隙を衝き、ロザリアの右手が新しい球体を作って素早く放つ。球体は長の体を祠ごと難無く呑み込み……数秒後 ぽむんっ! と、妙に可愛らしい音を立てて長と祠を吐き出し、霧散した。
 根の上に ごろりと横たわった長は
 (……あの。ロザリア?)
 「なんだよ」
 (長、ぴくりともしないんですけど。気の所為でなければ、呼吸まで止まってませんか?)
 「体の時間を止めてるからな。ちなみに、分離させた意識は結界の外へテキトーに放り出した」
 (分離?)
 「だってソイツ、人の話なんざ聞く耳持たない、お仕事第一、寧ろ仕事にしか興味が無い熱血漢だもん。こうでもしなきゃ、いつまで経っても水掛け論じゃん。一回外で揉まれて、柔軟な思考を身に付けてくれば良いんだ。ま、社会勉強ってヤツだな」
 (……幾百年を生きた人外生物が、社会勉強
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