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逆さの砂時計
Side Story
アンサンブルを始めよう
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しさに対する耐性も警戒心も対処方法も諦めも反抗心も実地で学んで身に付いてたから、今でも平然としてられるけどさ。リーシェは無知なまま三百年間も大切に大切に囲い込まれてたおかげで……ほら見ろよ。この、恐怖と嫌悪に染まり切った弱々しい姿。お前らの顔なんざ汚くて見たくもないんだと。こうなったのは私が「見せた」からじゃない。お前らがコイツを道具扱いして現実を教えず学ばせず、自分自身で考える力を削ぎ、選択肢すら一つとして与えてこなかった結果だ。子供を産ませるどころの話じゃなくなっただろうが、完全に自業自得だよ。バァーカ!」
 震え泣く肩を抱えて純白の髪を優しく撫でていたロザリアの手が、長へ向かって邪魔者を追い払うように「しっしっ」と動く。莫迦にされた怒りで血の巡りが偏ったのか、彼の顔が瞬時に赤くなった。
 「曲がりなりにも神々に遣わされし聖天女の娘でありながら、我ら世界樹の護り手を滅ぼすつもりか!」
 「お前らなんかどうなろうが知ったこっちゃない。けど、お前は「聖杯」を使わなかった。手順を省けばどうなるかを知ってて、敢えてそうした。(アリア)とクロスツェルが接触する機会を増やす為だけに、弱ってたクロスツェルの魂を餌として更に弱らせたんだ。……そうだよ。私達はクロスツェルもべゼドラも絶対に死なせたくなかった。其処を突いたお前の判断は憎たらしいほどに正しい。だから、コイツはその礼だ。利用して消耗させたクロスツェルの魂の分だけ、お前らも焦り苦しめ! くそったれ!!」
 聖杯? ……もしかして、あれの事だろうか。
 クロスツェルの記憶よりもずっとずっと遠くに感じる心当たり。
 騎士団長を通して国王陛下に呼び出された王城の一室で、神々に直接「使命を果たす覚悟が有るなら飲め」と言われて授けられた、無味無臭で半透明な赤い液体を湛える銀色の杯。
 飲み干した直後、心臓を無理矢理拡げられるような激痛と、体内を燃やされているような高熱に襲われ、一昼夜ひたすら転げ回ってた。治まった時には既に退魔と治癒の力を自在に使えていたから、あれが祝福なのかと、後日振り返って納得したものだ。
 ……そうか。
 あの液体は「神の血」。人の身には余る強大な力を負担無く扱う為に授けられた「神の魂の欠片」だ。
 力の源とも媒体とも言えるあれを生命核(しんぞう)に直接取り込んだから、アルフリードさんは勇者でいられた。
 逆に、私が時間を止める度に消耗していたのは、神か若しくは神に匹敵する悪魔の力を操る為の下地が与えられなかったから。その割に何度も使えたのは、女神(ロザリア)の守護と悪魔(べゼドラ)の支配が私に掛かる負担を軽減していたから。
 「外付けの癖に」じゃない。
 「外付けだからこそ」消耗したんだ。
 祝福を授かるなら、私は最低でも現代の力の保有者……長の血を飲まなければいけなか
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