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逆さの砂時計
Side Story
アンサンブルを始めよう
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くらいにな。だから、遠慮せずに受け取れ。クズ野郎」
 「「!?」」
 肩越しに振り返った途端、不敵に笑うロザリアが右手を掲げ、いつの間にか頭上に浮かんでいた薄緑色に輝く十三個の球体を彼女の周りに引き寄せる。成人女性を余裕で包み込める大きさのそれらの内一つが彼女の手前で破裂し、中から真っ白な……長と全く同じ容姿のエルフが滑り落ちた。
 「あ、……あぁ……」
 膝立ちの姿勢でロザリアの左腕にしがみ付いたエルフは、生気の欠片も無い顔で、聞き覚えがある高めの声を小刻みに震わせている。
 (……リーシェ?)
 見た目には判断し難いが、声の感じからしてエルフ族の中で唯一の女性体だというリーシェで間違いない。
 しかし、前に会った時とは様子が違う。
 「リーシェに何を!」
 異変に気付いた長が声を荒げると同時に
 「ひっ! やっぁ、っぐ、うぅ…… げふっ かはぁっ」
 耳を押さえて(うずくま)ったリーシェが嘔吐した。まるで、長の声を拒絶するように。
 困惑した長が手を伸ばそうとするが
 「いやぁッ! や、ご、ごめんなさ……ごめんなさいぃ!」
 その動作を気配で感じ取ったリーシェは悲鳴を上げて萎縮し、今度はロザリアの腰に抱き付いた。涙やら鼻水やらで汚れた顔をロザリアの白いワンピースに(うず)めて泣き喚く様は痛々しく、理解の範疇を超える何かと遭遇して恐慌状態に陥った幼い子供を彷彿とさせる。出逢った当初の元気一杯なリーシェが嘘みたいだ。
 「っ、彼女に何をした!?」
 「大声を出すなよ、猿山の大将。リーシェが余計に怯えるだろ。生憎、私は特に何もしてない」
 「何もせずに、彼女がそうなるものか!」
 「お前らじゃあるまいし、女に危害を加えて喜ぶ趣味は無ぇよ。ただ、お前らがリーシェに何を望んでるのか教えてやるっつって、母さんがバカ親父にされた事、バカ親父が人間の女達にしてきた事、私や人間の女達が人間の男共やべゼドラにされた事を、「お前らの顔に置き換えて」「見せてやった」だけだ」
 「なっ……!?」
 動揺した長が言葉を詰まらせ、勢いよく立ち上がる。
 ……立てたんですね、長。動けないのかと思ってました。
 「なんという、ことを……! リーシェはまだ!」
 「エルフの年齢では幼いほうだって? はっ! 笑わせてくれる。そうやって、大切にするフリで極限まで甘やかして。自分達への警戒心や反抗心を育てさせないように、自分達にとって都合が悪い事や苦痛が伴う醜い側面はギリギリまで隠し続けて。他に居場所は無いんだと疑わなくなるまで心底懐かせて、逃げ道を断って。んで、適齢期になったら「お役目」とか言って問答無用で押し付けるつもりだったんだろ? ホント胸糞悪ぃな、お前ら」
 「……!」
 「私は私を自覚した時点で結構散々な目に遭ってたし、世界の汚ら
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