Side Story
アンサンブルを始めよう
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を歩き。
正面へと向き直れば、地中から出た大きな根のうねりを二・三登った先に石積みの小さな祠が見える。
確かに、私が知ってる場所だな。一度来たきりで滞在時間も短かったが、こんな独特な空気は忘れようと思ってもなかなか忘れられるものじゃない。
かつて勇者一行が結界を張り、祝福を分け与えて護った世界樹。アリアの手掛かりを求めてべゼドラと一緒に飛び込んだ北の森。
エルフの里だ。
「あっちに一体と、こっちに三体……よし、見っけ……ん? あれ? なんで…… あー……ま、良いか。さっさと登れ、クロスツェル」
(? はい)
祠を目指してひょいひょい跳んで行くロザリアの後に続き、たまに手を突きながら滑りやすい根の道を慎重に登る。待っていたのは、当然
「はじめまして。ようこそ、我らが里へ。貴女が直接お見えになるとは思いませんでしたよ、女神アリア……いいえ、魔王レゾネクトと聖天女マリアの娘・ロザリア」
自らの長すぎる白い髪で祠の内部を埋め尽くした、エルフの長。
その外見は相変わらず、十歳前後の子供にしか見えない。
「ハジメマシテ、エルフの長サン。クロスツェルに手を貸したくらいだ。予想はしてたんじゃないのか?」
「……そうだね。貴方とはもう一度会いたかったよ、クロスツェル。祝福はもう必要無いのかな?」
虹色の目を開いた長が首を傾げ、ロザリアの隣に立つ私を捉える。
ああ、なるほど。
(借りを返すって、この力を長へ返すという意味ですか)
「ソイツを返すかどうかはお前の判断に任せる。好きにしろ」
(え?)
「本来は、時司の神が世界樹の為に残した大事な宝物だからね。憂いが無事に解消されたのなら、返してくれると助かるよ」
にっこり微笑む長と、彼を無表情で見つめるロザリアの横顔を交互に窺い……何にせよ、借りたままにするのは良くないかと考え、長の手前で片膝を突く。
「ありがとう」
長が私の胸元に右手を翳して目を閉じる。と、私の全身から溢れ出した虹色の光が長との間に集まり、くるんと丸まって、彼の手のひらに すぅー…… と溶け込んだ。
授かった時同様、私達の外見にも体調にも変化は無い。
「これで聖樹は今後も護られる。貴方のおかげだよ、クロスツェル」
「……はは。おかげ、ね。んじゃこっちも、お前らの働きに相応しい礼をさせてもらおうかな」
真っ直ぐ私を見据える笑顔に微笑み返すと、ロザリアが物凄く低い声で笑った。一緒に過ごしてきた時間の中でも聴いた例が無い、怒りを隠そうともしてない乾いた笑い声。
(ロザリア……?)
初対面の彼に、本気で怒ってる? 何故?
「貴女に感謝されるような事は何も」
「いいや? お前は的確で適切な判断を下してくれたよ。素晴らしい機転だった。思わず顔面を殴り付けたくなる
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