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逆さの砂時計
Side Story
アンサンブルを始めよう 1
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まで露骨に怯えられると、少々切ない。

「私の過去はどうでもいいとして。どこへ行くのですか?」
「あ、あ〜〜……うん。お前も知ってるトコ……」

 私が一歩退いて安心したのか、両腕をだらりと落として息を吐く彼女。

「私が知っている場所?」
「残りは私に付き合ってもらうって言っただろ。借りを返しに行くんだよ。ちょっとした騒ぎになるとは思うけど、お前は一切口出しするな」
「!」

 ロザリアの指が私の鎖骨付近に触れた瞬間、喉と耳奥に違和感を覚えた。
 聴こえる音に変化はないが……どうやら、私の声が封じられたらしい。
 試しに発声してみても、自分の耳には届かない。
 『空間』の力なのだろうけど、具体的にはどういう仕組みなんだろう?

(今すぐ行くのですか? 昼食は?)
「用事が終わったら、人数分作れ」

 おお。思考は繋がってるのか。
 面白い…………って。

()()()?)
「ん。行くぞ」

 答えになってない答えが返ってきた直後、目に映る景色が形を変えた。

 千切れ雲が浮かぶ青い空は、瑞々しい緑色に繁る枝葉で覆い尽くされ。
 歪な楕円形の湖は、齢何千の域を軽く超越しているであろう巨木の幹に。
 辺りを見渡せば、遠く離れた場所で、半透明な人間や動物が一列に並んで木の周りを左回りでのっそりと歩き。
 正面へと向き直れば、地中から出た大きな根のうねりを二、三登った先に石積みの小さな(ほこら)が見える。

 ……なるほど。
 確かに、私が知っている場所だ。
 一度来たきりで、滞在時間も短かったけれど。
 こんな独特な空気、忘れようとしてもなかなか忘れられるものじゃない。

 かつて、勇者アルフリードが神々の祝福、『治癒』の力を分け与え。
 聖天女(せいてんにょ)マリアが、『空間』の力で結界を張って護った聖樹……世界樹。
 女神アリアの手掛かりを求めて、べゼドラと一緒に飛び込んだ北の森。

 エルフの里だ。



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